ベネッセ教育総合研究所が選ぶ「調査データ クリップ!子どもと教育」

学校・教員

学校・教員 〜第3回〜

第3回

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  1. 多数意見は「地域差なく」「基礎的な内容を」「すべての子どもに」
  2. 子どもは友だち関係・授業重視、保護者は生活指導も期待
  3. 指導力不足教員が生まれる理由、教委は環境の変化、教員は時間不足
  4.         
  5. 自己評価はほぼ全校で実施、学校関係者評価はまだ半数

第1回

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学校教育に求めるもの「基礎的な学力」「人間関係力」「善悪の判断力」 学校生活には満足しているが、授業には消極的な中学生 教員に対する満足度 3割が満足、3割が不満 など


第2回

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小学校教員 算数の指導は得意だが、理科・社会に苦手意識 今後10年増え続ける教職員の退職、教員不足が問題に 学校長の声、人事に関する権限強化を希望 など

【3-1】多数意見は「地域差なく」「基礎的な内容を」「すべての子どもに」

学校教育に対する意見

出典
「学校教育に対する保護者の意識調査2008 速報版」 ベネッセ教育研究開発センター・朝日新聞社(2008)
調査対象
全国の小2生、小5生、中2生をもつ保護者5,399名

全国の小中学生の保護者を対象に、学校教育に対する意識をたずねた調査結果をみると、(1)教育内容の決定に関しては「どんな地域でも同じ教育を受けられるよう、教育内容は国が定めたほうがいい」が71.1%と多く、「地域による違いがあっても、教育内容は都道府県や市区町村が決めたほうがいい」の25.9%を大きく上回った。また、(6)学習内容の選択に関しては「義務教育では、すべての子どもに共通する内容を教えるのがよい」が6割を超えており、すべての子どもに共通の教育内容を望む保護者が多いことがわかる。

(3)教科書のレベルについては「教科書は基礎的な内容に重点を置いて作ったほうがいい」が7割を超え、(4)つけてほしい学力では「苦手な教科の学力」(63.6%)、(5)増やしてほしい授業では「教科書の基礎的な知識を身につける授業」(56.1%)と、基礎的な知識・内容を重視する保護者が多い。

(2)学校間の競争に関しては、競争により「教育が悪くなる」(65.4%)との意見が多く、(7)学校教育の負担に関する質問では、意見が分かれた。

【3-2】子どもは友だち関係・授業重視、保護者は生活指導も期待

通いたい中学校・通わせたい中学校(小学6年生とその保護者)

出典
「中学校選択に関する調査 速報版」ベネッセ教育研究開発センター(2008)
調査対象
全国の公立小学校に通う6年生とその保護者(小学6年生 1,501名、保護者 1,504名)

小学6年生の児童に「通いたい中学校」を、その保護者に「子どもを通わせたい中学校」をたずねた結果をみると、「とてもそう思う」の比率が高いのは、子どもでは「仲間はずれやいじめがない」(78.3%)、「わかりやすい授業をしてくれる」(76.3%)、「小学校の友だちがたくさん行く」(61.2%)となっており、子どもは、友だち関係や授業のわかりやすさを重視していることがわかる。

一方、保護者では、「わかりやすい授業をしてくれる」(80.9%)、「仲間はずれやいじめがない」(75.7%)、「悪いことをしたら厳しくしかってくれる」(60.6%)の比率が6割から8割と高い。上位2項目は子どもと同じであるが、保護者は、友だち関係や授業のわかりやすさに加え、生活面での指導も期待している様子がうかがえる。

【3-3】指導力不足教員が生まれる理由、教委は環境の変化、教員は時間不足

指導力不足教員が生まれる理由

出典
「教育委員会・学校法人アンケート、および教員アンケート」内閣府(2005)
調査対象
教育委員会・学校法人 1,084、江東区教員 129人、全国英語教員 131人

教員の採用実態等に関するアンケート調査から、「指導力不足教員が生まれる理由」をたずねた調査結果をみると、「保護者や生徒の教員を見る目が厳しくなったため」という回答が、都道府県教育委員会で61.7%、市区教育委員会で49.8%という結果になった。次いで「教える内容が多様になり、従来の教育ノウハウでは通用しなくなっているため」(都道府県教委55.3%、市区教委51.9%)もポイントが高い。

一方、教員では「教員の業務増大・長時間勤務等より研究や自己啓発の時間がとれないため」が、58.8%ともっともポイントが高い。この項目に関しては、都道府県教委17.0%、市区教委27.1%と、教員に比べてかなりポイントが低く、時間不足を痛感する現場の教員と教育委員会との意識差が浮き彫りになった。

また、教育委員会、教員ともに4割前後が「教員としての適性資質を欠く者は常に一定比率採用者の中に存在してしまうため」(都道府県教委38.3%、市区教委45.4%、教員41.2%)と回答している。

【3-4】自己評価はほぼ全校で実施、学校関係者評価はまだ半数

学校評価の実施と公表の状況

出典
「学校評価及び情報提供の実施状況(平成18年度間 調査結果)」文部科学省(2008)
調査対象
全ての都道府県・市区町村教育委員会及び全ての国公私立学校(大学、高等専門学校を除く)

学校評価及び情報提供の実施状況を調べた結果をみると、平成18年度の「公立学校における自己評価」の実施率は98.0%と、ほぼすべての公立学校で自己評価が行われていることがわかる。学校種別にみると、幼稚園では85.7%、小学校では99.7%、中学校では99.6%、高等学校では99.5%の学校で自己評価に取り組んでいる。
 自己評価を実施した学校のうち、評価結果を「保護者に広く公表している」学校は45.2%(調査対象校全体の44.3%)であった。公表方法としては、「学校便りを利用」が79.1%、「ホームページを利用」が31.4%となっている。

一方、平成18年度の「公立学校における学校関係者評価」の実施率は49.1%と全体の半数程度にとどまっている。実施率を学校種別にみると、幼稚園では約2割、小・中学校では約5割、高校では約7割となっている。
 このうち、評価結果を「保護者に広く公表している」学校は38.7%であり、これは調査対象校全体の19.0%である。公表方法としては、「学校便りを利用」が76.7%、「ホームページを利用」が34.4%となっている。  

参考資料
「学校教育に対する保護者の意識調査2008 速報版」ベネッセ教育研究開発センター・朝日新聞社 共同調査
「中学校選択に関する調査 速報版」ベネッセ教育研究開発センター
「教育委員会・学校法人アンケート、および教員アンケート」内閣府
「学校評価及び情報提供の実施状況(平成18年度間 調査結果)」文部科学省