教育フォーカス

【特集13】大学での学びと成長 ~卒業生の視点から振り返る

[第2回] 卒業生のキャリア意識と大学時代の成長実感 ―大学における「キャリア教育」推進の今後のあり方- [2/10]

2.大学における「キャリア教育」の推進

高等教育機関、とりわけ大学においては、厚生指導の一部として行われてきた就職指導を「キャリア支援」という枠組みに発展させ、学生の職業観・勤労観の醸成や人生をも包括したキャリア意識形成を目指す「キャリア教育」を積極的に推し進めてきた。

学校教育において「キャリア教育」という文言が初めて登場したのは平成11年の中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」である。学校種間の接続だけでなく、学校教育と職業生活との接続の改善も視野にいれたものであり、小学校段階から発達段階に応じて「キャリア教育」を実施する必要があると提言している。これを契機として、初等中等教育段階を中心に「キャリア教育」は広がっていったが、高等教育段階においては、平成8年にいわゆる就職協定が廃止となったことを受け、平成9年の文部省・通商産業省・労働省の三省合意以後に就業体験による職業移行プログラムとして導入されたインターンシップが一つの契機ともいえるだろう。

さらに、若年者の雇用問題に対し政府全体として対策を講ずるため、内閣府・文部科学省・厚生労働省・経済産業省による「若者自立・挑戦戦略会議」が平成15年4月に発足し、同年6月には「若者の働く意欲を喚起しつつ、すべてのやる気のある若者の職業的自立を促進し、若年失業者等の増加傾向を転換させる」ことを目的とする「若者自立・挑戦プラン」をまとめた。そこでは「教育段階から職場定着に至るキャリア形成及び就職支援」等が掲げられ、「キャリア教育、職業体験等の推進」「日本版デュアルシステムの導入、基礎から実践にわたる能力向上機会の提供」「専門人材の養成、配置等を通じた就業支援、キャリア形成支援体制の整備」等が具体的に挙げられている。

こうした流れを受け、国立大学協会では「学生(院生を含む)のキャリア発達を促進する立場(目的)から、それに必要な独自の講義的科目やインターンシップ等を中核として、大学の全教育活動の中に位置づけられる取り組み」を「キャリア教育」と考え、「大学におけるキャリア教育のあり方-キャリア教育科目を中心に-」として平成17年12月にまとめている。その中で<学生全体に対するキャリア教育><個別的キャリア支援・学生指導><自発的学習活動・課外活動等への支援>の3つの取り組みの構造化を試み、「大学生のキャリア形成と大学におけるキャリア教育」として示したものが図1である。

図1.大学生のキャリア形成と大学におけるキャリア教育(国立大学協会2005)

図1.大学生のキャリア形成と大学におけるキャリア教育(国立大学協会2005)

文部科学省では、こうした取り組みを財政的に支援すべく、若年者の就職環境を取り巻く状況に応じたプログラムを推し進めてきた。平成18年度及び平成19年度には、大学等において組織的に実施される質の高い実践的かつ体系的なキャリア教育を推進し、学生の高い職業意識・能力を育成することを目指して、現代的教育ニーズ取組支援プログラム「実践的総合キャリア教育の推進」が進められた。平成21年度には、政府一体となってとりまとめられた「緊急雇用対策」をふまえ、学生の就職率の向上やキャリア形成の促進を図ることを目的に、「大学教育・学生支援推進事業」就職支援推進プログラムが進められている。このプログラムでは「就職力を高めるキャリアガイダンスの推進」として、学生の卒業後の社会的・職業的自立につながる教育課程内外にわたる取り組み(キャリアガイダンス)を支援しており、各大学の特質をいかしながら、授業や支援といった枠を超えた教育課程内外にわたる多様な取組実践がみられるようになった。

さらに平成23年4月には、中央教育審議会での議論をうけて、大学設置基準及び短期大学設置基準の一部を改正する省令が施行された。この改正は、学生の社会的・職業的自立のために、大学や短期大学における教育や学生支援が行われるよう、学内組織の有機的な連携や適切な体制整備を求めるものであり、「職業指導(キャリアガイダンス)の義務化」として広く報道され、一般的にも認知されている。
知識基盤社会の到来、産業構造の変化、グローバル化や少子高齢化の進行等により、労働市場では、学生に自律的なキャリア開発を求めるようになった。その一方で、大学においては、学習意欲に欠ける学生やコミュニケーション能力の乏しい学生が少なからずみられることが多々指摘されている。近年、大学生の就職状況は一時に比べれば好転しているが、就職指導やキャリア支援としてだけではなく、リメディアル教育としても「キャリア教育」への期待は高まっている。

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