教育フォーカス

 

【特集15】アクティブ・ラーニングを活用した指導と評価研究
 ~授業レポート~

[第1回] 批判的思考力を育む~玉川学園高等部 国語科と理科で創出した「理系現代文」の実践  [2/6]

1.「理系現代文」の概要

・対象   12学年(高校3年生)理系クラス40名
 ・授業時数 前期34回、後期27回 1コマ50分授業
 ・担当教員 小林慎一先生、小林香奈子先生、島津 遼先生の3人のチーム・ティーチング
 ・教材   独自のテキストを作成(課題文は担当教員で選定。毎年、見直して、
       いくつかは入れ替えている)
 ・年間目標 (独自テキストより。ベネッセ教育総合研究所により一部改訂)
  ①将来の研究活動を支えるために必要な「ことば」について学ぶ。
  ②様々な問題に対して自分の意見を持ちつつ、批判的思考力をもつ。
  ③課題研究に取り組む姿勢と方法を身につける。
  *内容 主に理工系に関する素材を用いた文章をテキストとして、読解や探究に取り組む。

将来の研究活動を支える批判的思考力を育成

「理系現代文」は、12年生(高校3年生)の理系の生徒全員を対象とした授業で、国語科と理科の先生が協働してつくり上げている。前述のような年間目標を設定し、理系分野に進む生徒が大学進学後や、社会人となってから必要となる力を育む。

小林慎一先生

小林 慎一先生 

同校が「理系現代文」の授業を開講したのはSSH指定前のことだ。当初から担当する小林慎一先生は次のようにねらいを説明する。「高校の理科の授業では、先人が確立した理論を学ぶことが多く、『答え』があるものと思い込んでいる生徒が少なくありません。しかし、実際の科学の現場は、そうした決まった答えがある世界ではありません。科学の面白さを伝える文章を読むことを通じて、興味や態度を育みたいという思いが、この授業を始めた原点です」

「理系現代文」の開講は、国語科が抱えていた課題へのアプローチでもあった。私立大学の理系学部の多くは入試科目に国語を課していないため、志望者の中には、国語の授業に集中できない生徒もいた。そこで、理系の生徒が興味を持つ内容の文章を題材とすれば、その課題も克服できると考えたわけだ。

現在の「理系現代文」のカリキュラムは、大きく前・後期に分かれている。前期は理工系の素材を用いた文章の読解を中心にして批判的思考力を育み、後期は探究学習を通して、さらに批判的思考力を高めていく。

後藤芳文先生

後藤 芳文先生

また、玉川学園では、児童・生徒が課題について論理的に考えられるようにするために、「学びの技」という独自カリキュラムを設け、9年生(中学3年生)までに基礎的な思考のスキルを身につけさせている。学びの技担当(代表)で、国語科の後藤芳文先生は次のように話す。

「場面によって比較したり、分類したり、多面的に見たり、関連づけて考えたりするといった考える方法の使い方などの基礎を9年生までに一通り身につけさせます。様々な型を習得することで、筋道立てて考え、分かりやすく表現することにつながりますし、批判的思考力などの向上にもつながります。結果、生涯学ぶことを楽しめる生徒になると考えています」


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