教育フォーカス

 

【特集16】新課程における新しい学びとは

[第1回] 未来を生きる子どもたちのために、学校教育に求められるものは何か  [3/4]

. 次期学習指導要領案では「学習内容の削減はしない」とありますが、
  全てを育成するには時間が足りないのではないでしょうか?

A. その教科の"本質的な問い"を通して"見方・考え方"を捉えることで、
  より効率的に学べるようになります

教員がこれだけの内容を教えなければいけない、さらに能力もつけなければならない時には、その教科の見方・考え方を捉えることが重要です。頭を働かせて学習し、その学んだ知識が概念化・構造化されて結びついていくと、「この教科はこう考えるのだ」ということが分かってきます。すると、驚くほど、その教科が繰り返し似たようなことをしていることに気づかされます。各教科には、一貫した「本質的な問い」が必ずあります。例えば、地理で言うと立地条件などで、その問いを繰り返し行っているのです。

一度、ある領域の見方・考え方を習得すれば、新しい領域を学ぶときには、それを当てはめて考えられます。こうして、見方・考え方などが身についていけば、新しい領域でも早く効率よく学び取れるようになります。

教科書の内容をまんべんなく扱い、どれも同じように時間をかけて指導するのではなく、初期の知識・技能の習得にはじっくり時間をかけ、そうでない場合とのめりはりをつけることが大切です。

これまでは、その本質に自ら気づける子どもは、知識習得の速度が速く成績もよくなるのですが、そうでない子どもは、知識を丸暗記するために時間をかけても成績が伸び悩み、しだいに意欲もなくなるという悪循環が起こっていました。

次期学習指導要領では、この教科ごとの見方・考え方の獲得を、子どもの力量に任せるのではなく、全ての子どもが全ての教科で身につくように指導していこうとしています。そのような指導ができれば、子どもの学力差が小さくなっていくことが期待できます。


.「学びに向かう力、人間性等」は教科学習で教えられるものなのでしょうか?

A. 教科学習の経験から身につけるとともに、教科の見方・考え方が
  人間性を育むこともあります

興味・関心や意欲は、その人の人格だという考え方もありますが、心理学の研究ではスキルとして捉え、育めるものとしています。情意は経験によって身につき、領域に依存するものではないので、各教科で工夫して育むとよいでしょう。

一方で、教科ごとに固有に育める人間性もあります。
 例えば、算数・数学では、複雑な問題を単純化して考えます。そして、本当にその解が正しいか、立ち止まって検証します。こうした立ち止まり、本当に正しいか、何か見落としているものがないかと考えることは、道徳的感覚を養うことにもつながります。

また、社会科では、答えは1つではなく、さまざまなケースがあることに気づくことで、物事を多面的多角的に捉える姿勢につながります。

このように、教科学習で培った見方・考え方、対象へのアプローチの仕方は、実社会を生きる姿勢にもつながっていくのです。


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