教育フォーカス

 

【特集16】新課程における新しい学びとは

[第4回] 主体的・対話的で深い学びを実現するために、
             教員はどう取り組めばよいのか [2/4]

. どのように授業設計をしたらよいのでしょうか?

A. 学びの「ゴール」と「方法」を明確にして、小さな目標を設定しながら、
   連続体として学びをデザインしていきます

図.「批判的思考のプロセスと構成要素

図.授業デザイン・イメージ

※上記画像をクリックすると拡大します。

授業にアクティブ・ラーニングを取り入れる際には、「ゴール」と「方法」の両方をしっかり押さえておく必要があります。例えば、「方法」しか見ていない場合は、アクティブ・ラーニングの「型」をなぞるだけとなり、どのような力が育つのかという「ゴール」が分からない授業となってしまいます。一方、「ゴール」だけを設定しても、「方法」が分からなければ、授業づくりが難しくなります。

これからの授業のデザインは、教員がその授業で身につけさせたい教科の内容と資質・能力を明確に規定し、学習の内容や方法を検討することから始まります。「この単元や授業では、この資質・能力のこの部分を伸ばす」といったゴールを明確にし、そこに向けて、ここでは思考を広げたいとか、ここでは振り返りをさせたいなど、子どもの学びの姿をイメージしながら、小さな目標を設定していきます。そして、それらを"学びの連続体"として、授業全体をデザインしていくのです(図参照)。

そのために重要になるのが、カリキュラム・マネジメントです。まず、子どもが何を、どのような順序で学ぶことで、どのような資質・能力を育むのかを、各学年・教科を超えて系統的に組み立ててデザインする"カリキュラム・マッピング"を行います。そして、その結果を評価して、見直しを行いながらカリキュラムを回していきます。

資質・能力は、ある特定の教科だけでなく、あらゆる教科、さらに特別活動なども含めた学校教育全体で育成するものであるため、カリキュラム・マネジメントの視点が欠かせません。各専門の教員が集まり、自校の子どもの実態や課題を踏まえ、それぞれの教科がどのように分担して資質・能力を伸ばしていくかという論議が必要になるでしょう。

. 受け身の子どもが多く、本当に子ども主体の学びは成り立つのでしょうか?

A. 子ども主体であっても、授業をデザインするのは教員です。
   活動の選択、課題設定、振り返りにより、子ども自身の学びを促します

小柳 和喜雄先生

子どもに対して、「さあ、考えなさい」と言うだけでは、子どもの思考は活性化しません。子ども主体の学びであっても、授業をデザインするのは教員です。子ども主体の授業デザインする上で重要な観点として、以下のようなことが挙げられます。

1つ目は、一口にアクティブ・ラーニングといっても、いろいろなレベルがあることです。子どもに気づきを促したいのか、思考を深めさせたいのか、興味・関心を引き出して学びに向かわせたいのかなどによって、議論、探究、表現活動など、行うべき学習活動は異なります。また、なかなか自ら学びに向かうことができない子どもたちには、自尊感情を高めるための協働なども考えられます。子どもの状況や目的に応じて、それに適した活動を取り入れることが重要です。

2つ目は、子どもが主体的になるために、ずっと問いを持ち続けられるような工夫が必要になることです。課題の内容やレベルにより、子どもの思考は大きく左右されます。例えば、とにかく多くのアイデアを出させたい場面では、子どもの気づきに任せて話し合わせるのもよいでしょう。一方、グループワークを通して思考を深めたい場面では、多様な考え方ができ、すぐには答えにたどり着けない深い課題が必要となります。この場合は、子どもの気づきだけに任せると浅い思考で終わってしまうことが多いため、教員が課題を設定することが必要です。また、子どもの思考は、子どもにとって面白い課題でないと活性化されません。子ども自身が知りたい、解決したいと思うからこそ、そのために何を調べればよいのか、どうまとめると伝わるのかなどを真剣に考えるようになるのです。

3つ目は、振り返りの支援が重要であることです。子どもが自分で学びを進めるためには、「学びに向かう力」が不可欠であり、振り返りの視点、いわゆるメタ認知の力が欠かせません。自分が今どういう状況にあるのかをモニタリングしたり、何が好きかなど、自己認識をしたり、次に何をしたらよいのかを考えたりするなど、自分自身を振り返って高めていく仕組みが必要となります。自分にとって必要な学習を考え、次の一歩を踏み出すことの繰り返しで、学びはつくられていくからです。

 

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