以上の分析から見えてきたのは、保護者は自分が経験したことと類似の経験を子どもにも経験させる傾向が見られるということだ。それは、「世帯年収」といった経済的要因や、現在の「嗜好」(その活動が「好き」という思い)ほどは強くはない。しかし、やはり習い事などの具体的な活動を通じて保護者の経験は子どもに伝承される。このことは、家庭ごとの特色(スポーツ好き一家、芸術好き一家など)を生む要因になっていると思われる。
同時にこのことは、格差が再生産される構造の一端を示してもいる。家庭ごとに特色があることは健全だと思う一方で、保護者の嗜好や経験によって子どもに与えられる経験が違うとしたら、どのような保護者の下でも子どもにとって必要な経験をいかに平等に与えるのか。そこには、大きな課題が内在しているといえるだろう。
■ ピエール・ブルデュー、 1990 『ディスタンクシオンI・II』石井洋二郎訳 藤原書店。
■ 片岡栄美、2010「子どものスポーツ・芸術活動の規定要因―親から子どもへの文化の相続と社会化格差―」Benesse教育研究開発センター『学校外教育活動に関する調査報告書』。
■ 西島央、木村治生、鈴木尚子、2013「小中学生の芸術・スポーツの活動状況に関する実証研究-地域、性、家庭環境による違いに注目して」日本文化政策学会『文化政策研究』第6号。
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