教育フォーカス

【特集8】「一人一台環境における学びの自立を支援する学習モデルの検討」研究より

[第2回] タブレットを用いて家庭学習の内容をクラス内で共有し、自学の変容を促す─実践編  [2/6]

◎ タブレットのカメラ機能で自分のノートを撮影し、一つのアプリに蓄積

どのように実践を進められたのか、その手順を教えてください。

菊池:本校では、3年生の宿題を含めた家庭学習時間を1日30分は必要としています。同じ宿題でも、子どもによってかかる時間は異なるので、時間が残ったときには自分に必要な学習に取り組もうと、日ごろから呼びかけています。今回の実践でも、同じように子どもたちに伝え、やりたい子はその学習した内容を記録に残し、みんなで見られるようにする取り組みを始めると説明しました。

使用した機器は、iPad Air38台、Wi-Fiルーター1台です。これらはCRET(特定非営利活動法人教育テスト研究センター)から貸与していただいているもので、子どもが一人1台タブレットを使える環境で実践しました。使ったアプリケーションは入力用アプリケーションと閲覧用アプリケーションで、やることは下の①~③と、とても簡単です。

  • ① 家庭で自主学習を行う。
  • ② 翌日の朝の会で、入力用アプリケーションでアンケート(図1)に答える。
  • ③ 自主学習のノートをタブレットのカメラ機能で撮影し、画像をアップロードする。
毎日の振り返り項目

毎日の振り返り項目

タブレットを必ず使うようにとは伝えませんでしたが、全員がタブレットを使いました。また、慣れてくると、3年生でも5分ほどでアップロードまでを完了しました。取り組みを始めて数日も経つと、私が朝の会で主要な連絡事項を伝え終わるとすぐ、子どもたちの方から「先生、iPadだよね」と言ってきて、「そうだよ」と答えると、自分たちでiPadを取り出し、操作を行うようになりました。

ただ、学校行事などもありましたので、朝の会や1時間目の授業の冒頭に入力時間を確保できなければ、入力しないときもありました。結果的に4週間で計14回アップしました。

なお、ベネッセコーポレーションに許可をいただき、同社の「総合学力調査」の学習意識調査を基に作成したアンケートを最初に行いました。また、同じアンケートを4週間後にも行い、子どもの意識などに変化が見られるか確認できるようにしました。さらに、毎週金曜には、稲垣准教授が作成した「ふりかえり→計画シート」も行い、その週の自主学習を振り返り、次週以降に向けて、どんな自主学習に取り組んでみたいかを考えさせるとともに、変化を追えるようにしました。最終日には、4週間の取り組みを振り返って気付いたことや今後の自主学習について、クラス全員が発表する時間を設け、定性的な変化の様子も確認しています。

「ふりかえり→計画シート」

「ふりかえり→計画シート」

アップしたノート画像などの共有についてですが、1日目から子どもたちは自然と始めていました。私がタブレットの操作に不慣れな子どもたちに個別に対応していた、わずか10分ほどの間に、タブレットの操作に慣れている子どもたちが、ほかの子どもがアップした画像を見始めていたのです。画像は任意の番号で管理していましたので、「○番、面白いよ!」といった声がどんどん広まっていき、私が何も指示しなくても、学びが共有されていったのです。

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