教育フォーカス

【特集8】「一人一台環境における学びの自立を支援する学習モデルの検討」研究より

[第2回] タブレットを用いて家庭学習の内容をクラス内で共有し、自学の変容を促す─実践編  [3/6]

◎タブレットは自分の内面をのぞき込む「自分ビューア」

子どもたちは自然とノートの共有をし始めたのですね。

菊池:事前アンケートでは、家庭などでタブレットを使った経験のある子どもは89%いました。授業でもタブレットを活用していますので、子どもはその操作に慣れています。ただ、ノートを撮影して、データをアップロードするというのは初めての経験になるので、簡単とはいっても、操作面で不安に思う部分もありました。しかし、それも杞憂でした(笑)。当初は、私がノート画像の共有を指導するつもりでしたが、その前に子どもたちが共有を始めていたので、そのまま子どもたちの自主性に委ねることにしました。

先生は先ほど、「以前は自分でほかの子どものノートを見せていた」と言われていました。それと、子どもがタブレットでほかの子どものノートを見るのと、どのような違いがあるのでしょうか。

菊池:教員が「このノートはいいよ」といって見せると、「先生が理想とする学習はこれだ」と子どもは感じて、そのノートが取り組みの基準になり、大半の子どもが同じことをします。

また、子どもを個別に呼んで、その子の目標となりそうなノートを見せたとしても同じです。もちろん、それをやる意味はありますが、子どもが手本として受け取るだけでは、自ら課題を見つけて取り組む学びにはなりません。

一方、タブレットでクラス全員の自主学習ノートを自由に見られれば、38人分の学習の成果を自分の学習と見比べ、取捨選択することができます。

Aさんは、自分より上手に漢字を書いているノートが多いことに気付き、「自分はもっときれいに書かないとだめだ」と思ったのでしょう。1画1画をとても丁寧に書くようになり、4週間後には見違えるように漢字を上手に書けるようになりました。最後の振り返りの時間では、「私はこれ(自主学習)をやったことで、漢字が今まで以上に上手に書けるようになって、とてもうれしかったです」と発表し、大きな拍手が起きました。教員が働きかけなくても、漢字練習に取り組む姿勢が大きく変わったことに、その子どもの成長を感じました。

Bさんは、デッサンを描いてきました。それはとても素晴らしい絵で、クラス中が驚きました。それを機に、絵を描いてくる子どもが増えました。漢字の書き取りや計算練習といった学習をしていた子どもたちが、「絵も学習なのだ」と気付き、自主学習の幅が広がっていきました。

今回の学習スタイルは、他者のノートを見ることによって、自分の学びを振り返るという「自分ビューア」の側面を持っています。多種多様な学習を見て、子どもはいろいろな気付きや刺激を受けていました。自分で気付いて、次の行動を起こしているからこそ、定着し、継続もされていくのだと、改めて感じました。私の見えないところで、子どもはたくさん気付き、たくさん変化していたのだと思います。

漢字ノート デッサン

子ども達のノートの様子(本文とは直接関係ありません)

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