教育フォーカス

【特集8】「一人一台環境における学びの自立を支援する学習モデルの検討」研究より

[第2回] タブレットを用いて家庭学習の内容をクラス内で共有し、自学の変容を促す─実践編  [4/6]

◎ クラスメートに理想の学習モデルやライバルを見いだす

子どもたちの自主学習を振り返って、先生にはどのような気付きがあったのでしょうか。

菊池:意外だったのは、子どもの多くが自分の課題を的確に捉えて、自主学習に取り組んでいたことです。先ほどお話したデッサンに衝撃を受けた後には、絵を描く子どもが確かに増えました。しかし、「にがて」だからと、漢字の書き取りや計算練習など、基礎学習を継続したり、基礎学習に戻ったりする子どももいました。また、興味深い調べ学習やダンスやサッカーなどの運動をする子どももいて、教室から「すごい」という賞賛の声があがるのですが、全員がそれに流されることはありませんでした。

「調べ学習は自分には難しい」「絵は上手に描けない」という理由もあるでしょう。でも、「にがて」だからと漢字練習を続けていた子どもには、そうした基礎・基本の学習が私から見ても必要でした。無理をして難しいことをするのではなく、必要なことを自ら見付けて取り組むのは、素晴らしいと思いました。

また、子どもは、クラスのなかで自分の理想の学習者モデルまたはライバルを意識しながら学習するということにも気付きました。「ほかの人がやらないような学びをやっていきたい」「自分の知っていることをみんなに紹介したい」など、自分なりに目的意識を持ち、ある3人は競い合いつつ、毎日、さまざまな調べ学習をしていました。

自主学習は課題の設定が自由ですから、授業ではできないような取り組みをする子どももいました。Cさんは、幼い妹の部屋を片づけるお手伝いを何日間か自主学習のテーマにしていました。最後の振り返りでは、「初めは20分かかったけれども、今は10分でできるようになりました」とうれしそうに報告していました。これが自主学習かと疑問を持った子どももいたようですが、私は学習だと伝えました。課題を見つけ、工夫をし、片づける時間を20分から10分へと業務効率をアップさせたわけです。授業ではできない、課題解決型学習をしたといえるからです。ただ、その過程を言語化できていなかったので、Cさんには「次はどういうところを問題に思い、どう工夫したのかを書いてみよう」と伝えました。

このように、子どもは、教員が何も言わなくても、自分で課題を見つけて、自分なりに学習に取り組めると改めて気付きました。とてもうれしかったですし、今まで私が実現したかった夢がかなったと思いました。

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