教育フォーカス

【特集8】「一人一台環境における学びの自立を支援する学習モデルの検討」研究より

[第2回] タブレットを用いて家庭学習の内容をクラス内で共有し、自学の変容を促す─実践編  [6/6]

◎ 学びの自立を支援する、有意義な取り組み

今後についてお話ください。

菊池:今回、事前事後のアンケート、週1回のアンケートを4回、そして毎回の自己評価と、子どもの内面を丁寧に追っています。そのデータと、ノートの内容を分析し、子どもたちの変化の様子、その要因を考察し、よりよい学習スタイルにするための改善点を探っていきたいと考えています。

今後もこの取り組みを継続していく際に、どのような留意点があるとお考えですか。

菊池:子どもに飽きが出てきて、ルール違反などが起きてくると予想しています。この4週間、私は子どもの提出物のフィードバック以外の取り組みは子どもたちにまかせていましたが、取り組んでいる子どもの数は極端に下がりませんでした。今後、子どもたちがペースダウンをしてきたときには、教員の指導が必要になると考えています。また、授業で取り上げたり、自主学習の内容をレベルアップさせたり、最適化していくような指導も、適宜していかなければならないでしょう。

ただ、毎日、教員のコントロールが必要ということではありません。この取り組みの、子どもが自分を客観視し、気付きを促すことで、子どもの学習意欲を高めていき、自立した学習を支援するという仕組みと価値を変える必要がないからです。

システム環境がしっかりしていることも重要だと思います。今回はスペックが高く、画像がクリアで、アップロードもストレスなくでき、ノートのビューアもスムーズに見ることができました。実は、そうした環境が非常に重要で、子どもが思いのままに他人のノートを見ていったことで「これがいい、やってみよう!」と意欲も高まっていったと思います。今後、画像がどんどん蓄積されていき、データが重くなることで、タブレットの動きが遅くなったりすることが懸念されますが、子どもの意欲を阻害しないシステムであることが重要です。

小学3年生は、自分を客観視し始める年齢といわれており、教員としても客観視できるよう支援をしていきます。そうした時期に、このような他者と比較をして自分を見つめるシステムを用いることは、客観視をしやすくする側面もあったのではないかと思います。もちろん、この取り組みがなくても客観視できるようになっていた子どももいますし、これを行った後でも客観的に見ることが難しい子どももいます。ですが、子どもが自立していく第一歩を支援するという意味でも、有意義な実践でした。

今回の実践の成果と有効性が大きかったことがよく分かりました。ありがとうございました。

 インタビューを終えて

今回の菊地先生へのインタビューでは、現場だからこそ得られるキーワードを、先生や子ども達からいくつもいただきました。また、「自信がついた」という項目に★が1つか2つしかつけられなかった勉強の苦手な児童が、最後に★を4つつけられるようになった話など、記事では取り上げられなかったエピソードをたくさんお伺いしました。気付いたのは、外からは見えにくい様々な学習方法が、学校現場では連綿と受け継がれ個々に応じて実践されており、多くの子どもは学校を通して学ぶことが好きになっていくということです。

「子どもは未来」を実現し続けている学校や教室の持つ力を改めて感じるとともに、「理論・実践・ICTなどの技術」を組み合わせていく事が、子どもたち個々の学びを広げると実感しました。

ベネッセ教育総合研究所グローバル教育研究室 主任研究員 住谷 徹

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