教育フォーカス

【特集8】「一人一台環境における学びの自立を支援する学習モデルの検討」研究より

[第3回] タブレットを用いて家庭学習の内容をクラス内で共有し、自学の変容を促す─分析編  [4/5]

4.分析結果を振り返って?提案者と実践者の対談

◎低学力層も家庭での学習を続けるきっかけとなり得る

住谷:今回の研究を振り返ってみてどのような感想をお持ちでしょうか。

稲垣:今回の研究では、この仕組みの第一の目的として、自立した学習者を育てることにありました。先生の指示がない日でも自主学習に取り組んだり、「にがて」な内容に意図的に取り組んだりするなど、自立した学習姿勢が見られていたと思います。

菊地:個人別のアップロード率では大きくは三つの層に分かれましたが、「熱心に取り組む層」は、もともと学習に熱心で、学力も上位にある子どもたちでした。同じテーマに継続して取り組む傾向が見られ、自分の持続できる学習は何かが分かっているのではないかと思います。その一方で、「デッサンが続いたから、調べ学習にしました」という子もいて、自分の学習を振り返り、課題に感じたことに取り組むという、自立した学習者に欠かせないメタ認知もされていました。

稲垣:このスタイルは自分の学習の履歴が見られるというメリットもありますね。「苦戦している層」についてはどう見られていますか。

菊地:「苦戦している層」は、普段の宿題も提出を忘れがちな子どもたちでした。担任にノートを提出するだけの自主学習では提出状況が悪かったので、期間中に半分も提出していたのはよくがんばっていたと思います。また、途中で自主学習をやめてしまわず、空白の期間があっても最後まで取り組んでいたのは大きな進歩です。

稲垣:このスタイルが学力の低い層にも有効だと言えそうですね。

菊地:この層の子どもたちのコメントを見ると、ほかの子の学習を見て、家で何を学習すればよいのかわかっていったことがうかがえます。タブレットによる共有が自主学習のきっかけになっているのです。今回、タブレットを家庭に持ち帰ることはできませんでしたが、もし家に持ち帰り、例えばサッカーやお手伝いなどのノートに残せない学習を撮影して、アップロードして、クラスで共有できるようになり、その内容をみんなに認められるようになれば、「苦戦している層」の自主学習の取り組み方がもっと変わるのでないかと思いました。

稲垣:毎週末の振り返りで、「たのしかった」「自しんがついた」などの項目で、肯定の割合は増えていくのも特徴ですね。

菊地:金曜の振り返りで翌週の課題に書いていることは、実は自主のテーマ選択にあまり反映されていませんでした。ところが、この取り組みを始める前日に、子どもは一人ひとり自分の3学期の目標を立てましたが、この目標と自主学習の内容には、割合と関連性が見られました。「苦手をなんとかしたい」「漢字を得意になりたい」など、立てた目標に沿って学習をしている様子が見られました。目標に対して、自主的にどのように頑張っているのかが可視化された取り組みにもなっていました。

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