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対談:遠山敦子氏に聞く   「挑戦のススメ」 [4/9]

 日本を代表して、駐在国と友好関係を保つ

新井 5つの体験のなかには海外体験もありましたが、遠山さんご自身もいろいろ海外体験をされている中で、トルコ大使の経験もお持ちです。大使という仕事はどんな仕事なのか。例えば、大使の1日というのはどのようなものか教えていただけますか。

遠山 大使は日本の国を代表して、駐在国との外交のさまざまな問題について相手国の立場やデータを調べ、意見を述べ、友好関係を保つということです。どこに力点を置くかというのは、国の方針もありますが、大使の能力や興味関心などに委ねられている面もあります。特に私の場合はもともと外交官ではないので、勉強し実践することはいっぱいありました。

トルコは日本との時差が8時間あります。まず、毎朝6時には必ず起きて、インターネットで日本の情報を調べます。東京からもすでに公邸にいろいろな記事がファクスで入ってきています。日本では今トルコがどのように扱われて、どんな記事が出ているか全て読みます。

その後、朝8時から大使館で会合です。各専門の担当官にトルコの政治、経済、外交、文化についてトピックスをそれぞれ発表してもらいます。トピックスによってはさらに詳しく調べ、この件は日本との関係が強いからさらに情報通の人から話を聞いてくださいというような指示を出します。お昼までにはさらに詳しい情報をもらい、午後にはそれをもとにレポートを書いて日本に送ります。

新井 1日で完結するのですか。

遠山 もちろん継続するテーマが大部分です。相手国の動きをフォローし、調査・分析をして、自分の意見を交えて本国に送るということですね。また、いろいろな会合に出たり、他国の大使との付き合いがあったり、自ら情報を取りに行ったり、地方のイベントに参加することもあります。例えば、日本企業が携わる火力発電所のオープニングイベントに出席することなどです。さらに、相手国の日本に対する注文をヒアリングして整理します。夜になると公邸にトルコのVIPや外交団を呼んで、ディナー・パーティーを開催して友好を深めました。

聞き手  新井 健一

ベネッセ教育総合研究所 理事長
あらい・けんいち ● 平成16年執行役員、教育研究開発本部長及び教育研究開発センター(現 ベネッセ教育総合研究所)長を兼務。平成19年1月NPO教育テスト研究センター設立。同理事長に就任し、OECD等海外の機関とネットワークを構築。現在、中央教育審議会初等中等教育分科会「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会」委員。総務省事業「青少年のインターネット・リテラシー指標に関する有識者検討会」座長代理などを歴任。

新井 とくに思い出深い仕事は何でしょうか。

遠山 私のトルコ大使の時代に、大きな出来事が二つありました。一つは、「土日基金文化センター」を首都アンカラに設立するという大プロジェクトであり、民間からの寄付集め、建設のフォロー、開館記念式典や諸行事など激務が続きました。もう一つは、帰任直前のトルコの大地震であり、地震大国日本としての援助をいろいろと手がけました。

新井 まさに激務ですね。睡眠時間が少ないとお聞きしているのですが、今もですか。

遠山 今は4時間ぐらいです。

新井 今のほうが少ないですか。

遠山 文部科学大臣に就いて以来、4時間になってしまいました。

新井 大使より大臣のほうが忙しいですか。

遠山 はい。大使の場合、ある程度時間を自分でコントロールできますが、大臣の場合はそうはいきません。国会対応、委員会対応、閣僚会議、政策決定のための分析や調査、ヒアリング、会合への出席や挨拶など守備範囲が広いです。

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