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対談:遠山敦子氏に聞く   「挑戦のススメ」 [5/9]

 国会期間中の大臣は超多忙

新井 大臣の1日を教えていただけますか。

遠山 国会が開かれているときは本当に過酷ですね。野党の皆さんからの国会質問が前日深夜のタイミングで来ますから。質問に対してどんな方向で答弁するかという大まかな指示を出して、職員が答弁資料を作ります。私の場合、朝4時に起きてインターネット経由で答弁案を受け取っていました。足りない部分などは私が付け足します。大臣レクが朝7時ごろから始まって、8時から閣議、9時から委員会というような日々が通常国会、臨時国会期間中はずっと続きます。

しかし、それは日中の話で、夕方以降になるとまた別の公務やイベントが待っています。さまざまな団体の会合とか、文化勲章の選定とか、いろいろな式典もあります。また、大きな方針を述べる機会があります。全国国立大学長会議や都道府県の教育長、教育委員長会議などです。

新井 国会の答弁を伺っていると、多岐にわたる内容を掌握されていますね。

遠山 国会では細かい点まで質問され、やりとりは記録に残ります。いい加減なことはできないです。知っていることでも念のために再確認した資料をもとに答弁します。うろ覚えで答弁すると大変なことになります。

 「学びのすすめ」とは何だったのか

新井 大臣のとき、特に印象に残ったことはありますか。

遠山 たくさんあります。世の中への影響という意味では、「ゆとり教育」が開始される時期でしたから。

新井 「ゆとり教育」の中であえて、遠山さんは「学びのすすめ」を発表されました。

遠山 私が大臣に就任したのが2001年の4月、すでに翌年の4月から新しい学習指導要領による教育が実施されることになっていました。いわゆる「ゆとり教育」です。国は新しい教育を10年かけて準備します。教育課程審議会で議論をして新しい指導要領を決め、教育課程を作り、それに基づいた教科書ができ、指導の解説書ができ、先行する準備段階を経て、翌年の4月から実施することになっていました。この学習指導要領はドラスティックな中身で、授業時数がかなり減るというものでした。

例えば数学だと単元によっては約4分の1減るというものがありました。授業時間数減は数学だけではなく、いろいろな教科に及んでいました。評価の仕方も相対評価から絶対評価になりました。また、新しく設置された、「総合的な学習の時間」は、これまでにないようなものでした。教育現場も大変だったようです。

当時、今度の学習指導要領では学力低下が起きるのではということで大騒ぎになっていて、本当にこれでいいのかという、国民の不安が募っていました。また、国際比較調査であるPISAの結果が出て、これまでトップクラスだった日本の成績順位が落ちました。

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