シリーズ 未来の学校

軽井沢の豊かな自然と多様性の中で、変革を起こせるリーダーを育てる

【後編】 国際バカロレア校を取り巻く動きから、教育のグローバル化を俯瞰する [2/4]

 国際バカロレアDPとISAKサマースクールのカリキュラム

では、小林氏が代表理事を務めるISAKのカリキュラム編成はいったいどのようになっているのか。今年のサマースクールの時間割から、授業科目を紹介しよう。

ざっと並べると、「リーダーシップ」「国際交渉」「演劇」「世界文学」「数学」「生物」「英語」「アジア史」「日本文化」など、普通の学校では見慣れない科目も並ぶ。これらの授業はすべてディスカッションベースで行われ、国際バカロレアの教育哲学、学習者像(learner's profile)を強く意識したものである。

なかでも『個人と社会』は国際バカロレアDPの特色である、多様性への寛容力を身につける目的で設定されており、サマースクールで実施されている「国際交渉」はこのグループに位置づけられそうだ。取材した際の授業では「南北朝鮮」をテーマに、生徒たちが自国の歴史や文化を背景に、積極的に議論していた。

一方で、普通の学校でも実施される科目である「数学」もひと味違う。取材した数学の授業では、「ニム」とよばれる、2人または2チームで競うゲームの必勝法を生徒たちがディスカッションしながら考えていた。これは公式や計算方法を学ぶだけでなく、生活の中でも応用できるようなケースを使って、さまざまな場合分けや組み合わせを用いて「思考力」を養成することが目的だ。DPで「数学」と「情報処理学」がセットになっていることも特徴だ。

それでは、ISAKの教員は、どのような狙いをもって授業を展開しているのか。数学を担当する教員、コック・ミン・リー氏は次のように話している。

リー 氏

リー氏 「数学はどの生徒にも必要な科目ですが、得意な生徒もいれば、苦手な生徒もいます。私の目標は、苦手な生徒には数学でできることを理解してもらうこと、数学が得意な生徒には計算力を高めるだけではなく、思考力を高めることで、新しい問題を設定し解決できる力を身につけてもらうことです」

リー氏が話す「新しい問題を設定し解決できる力」は、ISAKがグローバルリーダーに必要な資質のひとつだと考えている。

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