シリーズ 未来の学校

石巻市雄勝町のムーブメント、 地域住民と支援者がつくるホンモノの自然学校

【前編】 廃校になった小学校を、世界中の子どもたちとの交流の場へ [5/6]

 運命的に残った学校

旧桑浜小学校は、廃校を維持するのはコストが掛かるという理由で、雄勝町が平成の大合併で石巻市になる際に市が売却することになっていた。このとき桑浜小学校のあるひとりの卒業生が、桑浜の人々に思い入れのある小学校は残したいと譲り受けた。ところが、廃校は使うあても無く13年間の時が経過、震災を機にさらに朽ちていく。その様子を見かねた桑浜の人々は、いっそのこと壊してしまおうと、取り壊しのための復興予算もつけた。

そんなとき、sweet treat代表理事の立花貴(たちばなたかし)さんは、この学校と出合う。当時立花さんは、人事院の新人研修の講師を雄勝で担当していて、研修のグループワークのなかで偶然旧桑浜小学校を見つけ、所有者である小学校の卒業生からsweet treatが譲り受けたという。

 蘇る学校を見て、地元住民が動いた

地元の人たちと「学校再生プロジェクト」とはどのような関係性なのだろうか、立花さんに話を聞いた。

「地元の人もはじめは『本当に直せるの?』というような感じで見ていました。無理もありません。校舎には、裏山の土砂が膝下の高さまで流れ込み、校舎が左右の差で1メートル程度傾いている状態でしたから。ところが、毎週多くのボランティアが訪れて修復が進む様子を目の当たりにすると、徐々に地元住民の方々の様子も変わり、ついには修復作業に参加してくれるようになりました。学校が蘇っていくさまを体感して、自分ごととして考えてくださったのです」

立花さんは宮城県仙台市に生まれ育ち、地元の大学を卒業後、東京の大手商社に務める。その後、食品流通系の会社を立ち上げ、震災時には経営者として地域活性化事業に関わっていた。震災直後から炊き出しのために現地を訪れ、100食分の給食作りを3週間毎日続けた経験もある。そういう縁から、ついには雄勝で漁師になってしまうほど情熱にあふれた、行動力を持つ人物だ。

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