プログラミング教育で地域創生、
官民学が連携して地域人材を育成する島根県松江市の一大プロジェクト

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 松江をオープンソースの街に

Ruby City MATSUEプロジェクトは、JR松江駅前に「松江オープンソースラボ」という場所をつくり、「しまねOSS(オープン・ソース・ソフトウェア)協議会」が立ち上がったところから始まった。やがて、この場所にはプログラマーが集まり、オープンソースプログラミングの勉強会などが行われるようになる。2009年冬には、松江市主催で中学生にRubyを教えるプログラミング教室が開催された。さらに、2011年には松江市産業振興課(当時)が、Rubyを学校教育に取り入れられないか市内中学校長会で協力依頼を行った。

2012年、松江市立第一中学校の教師だった兼折泰彰さん(現在は浜田市立第二中学校に勤務)は、この打診に自ら手を挙げて、技術科の「計測制御」の授業にRubyを実験的に取り入れ始めた。英字や記号を使ってタイピングする部分が中学生には多少難しかったものの、生き生きとプログラミングに取り組む生徒たちを見て、兼折さんは手応えを感じたという。

兼折さんが異動した後も、同校教師の戸谷さんが引き継ぐ形でRubyの授業が行われた。最近では英字を使わず、もっと簡単にRubyのプログラミングを可能にするSmalruby(以下、スモウルビー)というプログラミングツールが登場したので、これを採用した。

戸谷さんは、2014年の1年間を通して企業と一緒にスモウルビーで動くロボットを開発。今年度はそのロボットを使ってプログラミングの授業を進めている。来年度からは、スモウルビーとこのロボットを使った授業が松江市のすべての市立中学に導入される予定だ。

こうした動きは松江市にとどまらない。2014年度から出雲市内の3企業を巻き込んで県立出雲商業高校でRubyを使ったモデル授業の開発が始められた。また、今年度からはスーパーサイエンスハイスクール認定を受けた普通高校の県立益田高校で、IT企業を巻き込んだIT講習会を始めた。島根県では、Rubyと公教育の融合が止まらぬ勢いで進んでいる。

一連のRuby教育のムーブメントは、学校以外でも見られる。2009年、中学生Ruby教室を松江市で開いた高尾宏治さん(スモウルビーの開発者でもある)は、2014年に「Rubyプログラミング少年団」を結成した。小学校低学年から高専生までを対象とする講座は、子どもたちに人気の教室となっている。

このように、松江市の職員がRubyという宝を掘り起こしたのをきっかけに、プログラミング教育に大きなシフトが起きようとしているのだ。

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