高等教育研究室

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【コンサルティングの現場から】
2014年度センター試験と入試改革

2014年01月31日 掲載
 ベネッセ教育総合研究所 高等教育研究室
 コンサルタント 村山和生

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2014年度大学入試センター試験の自己採点集計結果

 今年も1月18日(土)、19日(日)の両日で、大学入試センター試験が実施された。50万人を超える受験生が、第一志望合格に向けて挑戦したが、問題の難易度という点では、文系と理系で違いが出たようだ。データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション、駿台予備学校)による自己採点の集計結果によれば、5教科7科目型(900点満点)の平均点は、理系では対前年で10点以上アップする見込みだが、文系はほぼ前年並みに落ち着きそうだ。昨年度のセンター試験結果を振り返ると、文系、理系ともにその前の年度との比較で平均点がダウンし、多くの受験生にとって難易度の高い内容であった。今年度の文系の平均点は、その昨年度と比較しての「前年並み」であるため、2年連続で受験生にとって「難しかった」「思ったよりも得点ができなかった」と思わせるセンター試験だったということになる。特に、国語、生物Ⅰ、地学Ⅰなどの難易度が高かったことが影響しているようだ。
 この結果を受けて、自己採点集計段階では、かなり慎重に志望校を記入する受験生の姿が見て取れる。文系の受験生を中心に、いわゆる難関大を回避し、より確実に合格の見込める大学を探す「安全志向」が見受けられる。今後、高校などで行われる進路指導面談で、最終的な出願校を決定していくことになるが、受験結果の相対的な位置づけを冷静に確認することで、不必要な志望校変更をすることなく、希望進路を実現してほしいと強く願う。

「安全志向」の背景にあるもの

 実は、今年度の受験生の「安全志向」は、このセンター試験の結果を受けて始まったものではなく、今年度当初から確認することができた。例えば模擬試験での志望校記入についても、例年であれば「夏休み前までは強気の志望、秋から現実的な志望校検討」といった傾向になるのだが、今年に限っては、夏休み前から現実的な志望校検討をする受験生が多かった。この要因の一つに、今年度が「教育課程の変わり目」であることがあげられる。高等学校での新教育課程への移行に伴い、来年2015年度のセンター試験から、理科と数学が新課程の教科での実施となる。これに対し「現役で合格しないと、新課程の教科で受験しなければならない」との「誤解」から、例年以上に受験生や、その保護者に極端な「安全志向」があるようだ。マスコミ等でも「ゆとり世代最後の入試」と、不安感をあおるような発信が続いたことも影響したのではなかろうか。実際には、1年限りとはいえ「旧課程履修者への移行措置」があるため、今年度の受験生が来年度受験し直したとしても、極端な不利益をこうむることは考えにくい。にもかかわらず、入試の「制度変更」への「誤解・理解不足」から、しなくてもよい志望校変更をしているのだとすれば、受験生本人にも、受け入れる大学側にも、双方にとって不幸なことなのではなかろうか。

入試改革が「不必要な志望校変更」に繋がらないために

現在、センター試験に変わる「達成度テスト(仮称)」の導入などが検討されている。議論そのものは、高大接続をより本質的なものにすることを目的としているが、もし実施されれば、教育課程の移行と同等かそれ以上の「変化」になるだろう。その「変化」に対して、受験生が「誤解・理解不足」をして「不必要な志望校変更」をすることがないよう、改めて慎重な議論と丁寧な周知・徹底を望みたい。同様のことは、大学単位での入試改革にも言えよう。入試の方法や内容を変えることで、受験生に対してどのようなメッセージを発信するのか。自大学をどのように理解してもらうのか。どのような試験を実施するかの議論と同時に、「受験生の誤解・理解不足を回避し、正しい志望校選択を可能にする方法」についても、大学や高等学校、およびそれを取り巻くステークホルダー全体で考え抜く必要があるのではないか。これからの入試改革が、受験生にとってより本質的な志望校選択に資するものであることを願うばかりである。

プロフィール

村山 和生 (むらやま かずお コンサルタント)
1995年(株)ベネッセコーポレーション入社。高校事業部にて、近畿地区よび首都圏地区の高等学校向け進路指導支援を担当。その後、全国規模での入試情報分析および媒体製作、イベント企画および各種教員向け説明会・受験生・保護者向け講演会講師、大学情報企画などに従事。2012年4月より現職。

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