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中学版 企画室より

小中一貫校になった場合、
理想の学年区切りとは?

2014年11月13日 掲載
『VIEW21』中学版 編集長 草場 隆志

関連タグ: 学校経営 小中連携・小中一貫

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2014年7月に提出された「教育再生実行会議」の最終提言では、「小中一貫校を制度化し、学年区切りを自治体に委ねる」という内容が盛り込まれました。そこで「VIEW21」読者モニターの先生方に「望ましい学年の区切りと、その理由」を聞いてみました。意見の多かった学年区切り順にご紹介していきます。
(2014年10月実施、回答80名)


★現状の「6-3」制  [20名]

・大きな改革をするとかえって混乱するし、発達していく過程からいっても、いまのままが理にかなっている気がする。中高一貫も当初はよかったが、次第にやる気を失っていく生徒も現れて、全てがいいとは思えなくなっている。(岐阜県M中学校・研究主任)

・部分的に5・6年生で中学との交流授業を実施することから始めては?と考えるところもある。教員の指導体制や意識の変革も必要とするため、小中一貫のためにはすべてを大きく転換させる人的・物的な支援が必要。(千葉県K中学校・教頭)

・小中一貫や連携については、それが必ずしもよいことばかりではないことにスポットをあてるべき。進級とともに、新たな気持ちになったり、自分の殻を破ったりと、成長のチャンスだというとらえもあると私は考えている。(静岡県A中学校・教頭)

★小五と中二で区切る「4-3-2」制  [16名]

・4年(基礎期の土台づくり)-3年(学びの体験期)-2年(自己を磨く自立期)と、スモール・ステップ教育に意識した教育活動を願いたい。(岩手県K中学校・副校長)

・小学校の高学年においては一人の担任で全教科を教えるというシステム自体が破綻しているものと考える。高学年(5、6年生)と中1でギャップをなくす、教科担任制へ。(福島県S中学校・校長)

・私自身、中1ギャップの解消のための方策には大きなエネルギーを割いている。また小5あたりでの学習のつまずきを多く見ている。よって小4までで一つの区切りを、そして中だるみの回避の観点から、いわゆる中2からを1つのタームとして緊張感を持たせるのが適当と考える。(栃木県S中学校・教頭)

★小六で区切る「5-4」制  [11名]

・6年生には専門性のある学習が効果的だろうし、心の成長と考え合わせると5-4が望ましい。(福岡県H中学校・校長)

・小学校6年間は長すぎる。また中学校3年間は短かすぎる。さらに同じ校舎の中で学び、教員も相互の乗り入れがあるとよい。(北海道O中学校・教頭)

・中学校では、学習や生活だけでなく、部活動が大きな柱となっている。その活動を支えるためには、最低3年は必要。準備も含めて4年とすることで、学習にも部活動にも生徒会にも意欲的な生徒が育つと思う。(北海道K中学校・校長)

★そのほかの区切り案

●4-2-3>>小5、小6はやはり非常に成長する段階であり、学力の個人差が大きく出てしまう時期なので、そこだけ独立して丁寧に指導すると良い。ただ、中1や中2を見せることで、逆に中学生はこの程度かと見下す可能性もあるので中学校との区切りはほしい。(東京都O中学校・学年主任)

●4-2-3>>中学校での学習内容は3年間でまとまりのあるものなので、学年の区切りもそのままにした方がよいと思う。小学校高学年(5、6年生)については、小学校から中学校段階へのつなぎの学年として指導するようにすれば、スムーズに中学校段階へとつなげられるのではないか。(富山県F中学校・教諭)

●4-5>>小学校低・中学年と、小学校高学年・中学校の2つに分けるのが、不登校の未然防止、問題行動の未然防止には効果的と思う。(岡山県S中学校・校長)

●3-3-3>>特別活動の視点で、「見て学ぶ」「工夫を加える」「自立した活動」ということを考えると、中学校の3年スパンは適当と感じる。初期の3年は従来の担任指導。中盤の3年は教科担任制を引き、後半の3年は従来の中学校型でいいのではと思う。(東京都M中学校・学年主任)

●2-2-3-2>>小学校の低学年・中学年・高学年と中1をくっつけることで中1ギャップを小さくする。(東京都R中学校・副校長)



(写真はイメージです)


★今回の提言に対して

また、今回の提言そのものに対して、以下のようなご意見もありました。

・学年区切りを自治体に委ねると、首長が教育に対して主体的に考えることにより教育が活性化される期待の反面、自治体間で共通した取組を行いづらくなる。(新潟県T中学校・教諭)

・その学校の生徒の実状、発達状況によるので、いちがいに分けることはできないと思っている。(宮城県S中学校・教務主任)

・小中・中高一貫校での取り組みも必要だが、自治体の判断であまりに制度を変えると、転出・転入の生徒が学校になじめないなどの弊害も考えられると思う。(長崎県Y中学校・教諭)

・義務教育の枠を超え、高校までの、12年間を見据える視点が欲しい。(埼玉県O中学校・教務主任)

・教科の面では、国語、算数・数学、英語の学年の区切りはまったく必要ないと思う。9年間のカリキュラムがあって当然であり、特に英語については、小5から教科化になることを考えれば、5年間のカリキュラムを早急に作成し、全国で実行に移すべきと考える。(東京都K中学校・校長)

・小6から中1のよく言われる壁は必要と考えている。壁を乗り越えさせる指導が今こそ必要ではないか、子どもに楽な道を与えすぎ、厳しさが必要である。(埼玉県K中学校・校長)

★そもそも「学年区切り」とは?

 以上のご意見をうかがって改めて感じたのは、提言にある「教育課程の区切り」って何だろう?ということです。そもそも「小中一貫」校なので、現在の小学校と中学校のような区切りを意図しているわけではないでしょう。 

 現在の課題となっている「9年間を通したカリキュラム化」や「中1ギャップの解消」は、小中一貫校にした時点でほぼ解決するでしょうから、教科担任制を始めたり、英語教育や部活動を始めたりする区切りと考えると、その目的によって理想的な区切りは変わってくるように思われます。また先生のご意見にもあったように、学校規模や地域の状況によっても、理想的な区切りは変わってくるでしょう。

 いちばん気がかりだったのは、転校すると「3年続けて卒業式だった~」という子も出てくるのでは?ということでしたが、現在の小学校と中学校のような明確な区切りではないとすると、それほど心配する必要もなさそうです。

 いずれにしろ、今後は小中一貫校や小中連携の動きが加速していくと思われますが、現代~未来を生きる子どもたちの成長にとって、どのような指導やコミュニケーションが有効なのかを考える必要があるでしょう。ベネッセ教育総合研究所でも、先進的な事例紹介やデータ分析で、この問題を追究していきたいと思います。

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