教育情報

企画室より

三宅 なほみ先生、ありがとうございました。

2015年06月02日 掲載
BERD編集長 石坂 貴明

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2015年5月29日、三宅 なほみ先生が逝去されました。
心からお悔やみ申し上げます。

 三宅先生は認知科学、認知心理学の観点から学びの質向上研究に多大な貢献をされてきました。最近も中央教育審議会などで次期学習指導要領改訂に向けて中心的な役割を担われていました。また、ベネッセ教育総合研究所発行の情報誌へのご寄稿、国際シンポジウムへのご登壇等々、当研究所としても様々な角度からご指導とご厚情を賜ってまいりました。
(2005年BERD4月号・特集インタビュー「生徒同士の協調による学びが生徒の知識に深みを与えるより http://berd.benesse.jp/berd/center/open/chu/view21/2005/04/c01toku_21.html )


 「アクティブラーニング」がメディアを賑わす昨今ですが、三宅先生は追究されていた「分かる」とは何か、そして、よりよく「分かる」ための方法論とは何かという研究テーマの中で、協調的な学びの可能性にも早くから着目されていました。その知見と内外に広がるネットワークが、日本の教育改革が始まる今こそ必要だったことは言うまでもありません。

 三宅先生がアメリカで師事された世界的な認知科学者であり、ヒューマンインターフェイス研究の草分け的存在のドナルド・ノーマン博士もツイッターを通じて、深い悲しみと共に三宅先生の目指したことを象徴的にツイートされています。このツイートは当BERDウェブサイトでも連載を持たれているジャーナリストの林信行氏の問いかけに応えたものです。https://twitter.com/jnd1er/status/604661141277515776

授業や教材のつくり方からICT活用まで、思い込みやそれまでの常識の壁を取り払い、デザイン思考でより良い学びを実現しようという姿勢。人間の誰もが誤解なく「分かる」ためにはどうしたらよいか、その学びのデザインは誰のためかという三宅先生の研究実践からは、研究者のみならず学習者、企業人も大きな影響を受けてきたと思います。

 千呼万喚の思いで再び三宅先生の教えを請いたい気持ちは尽きません。しかし、ここで頭を垂れていたら、三宅先生に「分ってないなあ」と言われてしまうことでしょう。三宅先生は、常に教室や学びの場で学生や子どもたちと向き合い、人と人とのコミュニケーションからしか生み出し得ない知の創造と高まりを研究されていました。だからこそ、三宅先生の教えを忘れず、私たちはこれからもまっすぐ子どもたちの未来に向き合っていきたいと思います。ありがとうございました。

合掌


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