ビッグデータを活用した教育研究の取り組み

学校との共同研究

●夏休み中の利用の実験をしました(2016.9.5)

 夏休みは家庭学習に取り組んでもらう絶好のチャンス。ということで、夏休み前に教材の基本設定と使い方についての授業を行った後に家庭に持ち帰ってもらい、自由に学習できるようにしました。

 しかし、夏休み開始直後に、教材がダウンロードできないトラブルが発生。7月下旬と8月上旬に何度も学校にうかがい、タブレットの機能設定のし直しとダウンロードの作業に追われました。

 原因は、機能制限の仕方です。今回の研究では、学習に専念する環境を作るために、「進研ゼミ」の教材しかダウンロードできないような制限を何重にもかけました。その結果、改訂されるアプリの自動更新に対応できない設定になっていました。この対応で、学習専用の状態はそのままに、1台ずつタブレットの機能制限の仕方を変える作業をしました。

 それからも、生徒自身が設定したパスコードを忘れてしまったり、画面が固まったまま動かないタブレットが出たりと、小さなトラブルがいくつか起きています。タブレットの利用は学習効果を高める側面もありますが、設定に1か所不具合があっても使えなくなることがあります。便利なようでいて不便なことも多いと実感。学校での利用には、こうした運用面でのノウハウを積み重ねることが大切だということも深く理解しました。

 機能制限の再設定はたいへんでしたが、収穫もありました。作業しながら、タブレットを持ってきてくれた生徒に話を聞いてみると、多くがタブレットの学習に前向きで、楽しんでいる様子が伝わってきます。従来の学習にタブレットの学習を組み合わせて、効果的な方法を工夫しながら勉強しているという生徒もいて、学習量の増加とともに、学習の質の改善に役立てているケースが生まれていることもわかりました。(木村治生)



●教材の使い方についての授業をしました(2016.7.14)

 2016年7月14日に、岐阜市立三輪中学校と藍川中学校の2校で、本研究にかかわる授業をしました。授業では最初に、教育委員会と校長先生が取り組みのねらいについて説明。その後、ベネッセ教育総合研究所(三輪中学校は木村、藍川中学校は中垣)が、タブレットの基本的な操作方法、教材についての説明、初期設定、情報の取り扱いにかかわる指導などを行いました。また、時間の最後には、生徒が教材をダウンロードして、自分の好きな教科の学習に挑戦。教室のあちらこちらで教え合いが始まり、歓声が上がります。これから始まる学びにワクワクしている様子が伝わってきて、私にとってもこの上なく楽しい授業でした。

 教材(進研ゼミ+)には、学習の目標、レベル、内容、スケジュールなどを登録する機能があります。何を目標に、どのような学習をいつ行うか。そうしたことを自ら決めることは、自律的な学習者になるうえで必要です。また、そのように自分でコントロールしながら行う勉強は、学習効果を高めます。このことは、学習に関する私たちの研究(たとえば、小中学生の学びに関する実態調査 )でも明らかにされてきました。今回の実証研究は、今までわかっていたことを学習記録のログからとらえる貴重な機会。さらに、ログからは、今までは入手することが難しかったデータを得ることができます。その分析によってどのような新しい知見が得られるのか、とても楽しみです。

 そして、今回は、全国のデータと比較することで各中学校の特徴を明らかにしたり、子どもたち一人ひとりの学習の状況を可視化したりすることも試みます。その結果を教育委員会や学校に提供することで、ビッグデータを教育改善に役立てる仕組みづくりにトライします。学校の先生方とも一緒にデータを分析して、最終的には生徒一人ひとりの学習がよりよいものになる。その状態を目指していきたいと思います。

当日の授業の様子

▲当日の授業の様子


この日の授業までに、家庭や学校での使用環境の調査、タブレットの管理や運用ルールの検討、保護者の方々への説明など、多くの課題がありました。岐阜市教育委員会と三輪中学校・藍川中学校には、実践主体としてそれらの解決にあたっていただきました。そのご尽力に、心より感謝申し上げます。


プロジェクトリーダー
ベネッセ教育総合研究所 副所長
木村 治生



●学校との共同研究に着手します

 ベネッセ教育総合研究所では、「包括的研究推進等に関する協定」 を締結している岐阜市の協力の下、2校の中学校(7学級)・約250名の中学2年生を対象に、デジタル教材を用いた実証研究に着手します。
 この研究は、学校や家庭でデジタル教材を用いて学習した記録を分析し、その結果を学校に提供することで、学習指導の改善に役立てることを目的としています。研究の事前・事後に、標準化された学力調査や学習アンケートを実施して、どのような成果があったのかを検証する予定です。

この共同研究の様子については、随時、ウェブサイトを用いて報告します。

【共同研究の枠組み】

共同研究の枠組み





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