CO-BOワークショップ with キッズドア 実施報告

ワークショップ開催の目的

CO-BOプロジェクトの目的は、国内の学びに関する社会問題をより深く知る機会を提供することで議論の場を形成し、読者や参加者が自分なりの課題設定、すなわち「何を考えるかを考える」ことに取り組むことです。

CO-BOではこれまで、有識者の皆様による「フォーラム」を通じて社会問題の認知や理解の促進を目指してきました。ワークショップは、今まで蓄積した情報を活用し、「何を考えるかを考える」ことを実践する場を提供することで、参加者の学習意欲の向上や学びに対する姿勢の変化、社会的視点の醸成に寄与することを目指しています。

  CO-BOのめざすこと

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企画概要

主催: ベネッセ教育総合研究所 CO-BOチーム
企画・運営協力: (株)エデュテイメントプラネット
特定非営利活動法人キッズドア
実施日: 2015年2月24日
所要時間: 約3時間(ワークショップ実施前後のアンケート記入時間も含む)
会場: キッズドア・ラーニングラボ TOKYO
参加者属性: キッズドアでボランティア活動に従事している学生計13名
(大学学部生11名、修士生1名、既卒者1名)
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当日プログラム概要

時間

プログラム概要

15:1515:30

参加者集合  事前アンケート記入

15:3015:45

ワークショップ開始 イントロダクション、グループ分け、自己紹介

15:4515:55

“ワールドカフェ”の説明

15:5516:20

資料説明(…①)

外国にルーツを持つ子どもたちが直面する就学問題

16:2017:10

ワールドカフェ(…②)

テーマ:「外国ルーツの子どもたちの就学・進学問題」は社会問題だと思いますか? それはなぜですか? 

17:1017:20

休憩

17:2017:35

話し合いの振り返り

17:3517:50

まとめ解説…(③)

「何を考えるか考える」とはどういうことか

17:5018:10

考えてみよう~本日の最終課題~…(④)

あなたが現在「学びたい」と思っていることは何ですか? それはなぜですか?

18:1018:20

終了 事後アンケート記入

①資料説明

CO-BOが2014年度第1クールのテーマとして取り組んだ「外国にルーツを持つ子どもたちが直面する就学問題」という社会問題について、参加者全員が共通理解を持つために、この社会問題の概要解説を行いました。

解説には、CO-BOホームページ上で公開している「在留外国人の現状」「就学・進学問題に直面している外国ルーツの子どもたちの状況」「CO-BO 「就学・進学に困難を抱える外国ルーツの子どもたちの存在」という社会問題の構造(仮説 α版)」という3点の資料を参考資料として用いました。

「外国ルーツの子どもたちの就学・進学問題」は社会問題だと思いますか? それはなぜですか?
  というテーマについて、ワールドカフェ形式でディスカッションを実施しました。3グループに分かれ、15分×3ラウンドという形式で行いました。

③まとめ解説

ワールドカフェのテーマ、および最終課題をより深く考えるための考え方のヒントと、「何を考えるか考える」ということの意味についての解説を行いました。

④考えてみよう~本日の最終課題~

あなたが現在「学びたい」と思っていることは何ですか? それはなぜですか?
という問いを提示し、回答を個別で考えてもらいました。運営側で用意したワークシートを配布し、それに沿って回答を考え、記入してもらいました。

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当日の様子とアンケート結果から見えるもの

本ワークショップは、全体を前半と後半の大きく2つに分けることができます。「社会問題」について深く知り、考える時間であるワールドカフェまでを前半、「何を考えるかを考える」ことを実践するまとめ解説以降を後半と位置づけ、それぞれについて、当日の学生たちの様子や関連するアンケートの結果をご紹介します。

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【前半】 「社会問題」について深く知り、考える

ワールドカフェでのディスカッション中、学生たちから次のようなコメントを聞くことができました。

● ワールドカフェでのディスカッション
テーマ:「外国ルーツの子どもたちの就学・進学問題」は社会問題だと思いますか?
    それはなぜですか?

  • ・社会問題って、そもそも何だろう?
  • ・206万人(※)という数の在留外国人が日本にいるのだから、社会問題だといえるのではないか
  • ・個人間の問題以外はすべて社会問題?
  • ・解決に他の人(社会)が関わっているので、これは社会問題だと言えるのではないか
  • ・日本の子どもたちも受験で苦労をしている姿は日々目にしている。だからこそ、外国ルーツの子どもたちがさらに苦労するであろうことは容易に想像できる

※2013年12月末時点の日本国内の在留外国人数(法務省「在留外国人統計」より)

また、事後アンケートの「今回のワークショップで最も印象に残った内容を教えてください」という質問に対して、今回とりあげた社会問題やワールドカフェでの話し合いをあげている学生も多くみられました。結果的に社会問題とは何かを考えることを促したディスカッションテーマが、多くの学生たちにとって有意義であったと考えられます。

Q. 今回のワークショップで最も印象に残った内容を教えてください(回答は抜粋)

外国にルーツを持つ子どもたちの問題から、日本の抱える社会問題(日本の教育、文化的規範)に繋がっていると考えられたこと

社会問題とは「個人の問題でないもの」というのが心に残った。個人の問題にみえても、よく考えると、社会問題であることが多いと思った。

今回、扱った社会問題の原因の中に、「意識」という抽象的なものが扱われたことです。しかし、これが根本でもあるため、意識を変革していく重要性はあります。数値化(厳密)が難しくても、今後、取り組んでいく価値があると思います。

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【後半】 「何を考えるかを考える」ことを実践する

ワークショップ後半では、まとめ解説を聞いたのち、ワークシートに従って、「何を考えるかを考える」ということに取り組んでもらいました。なお、今回は「学び」というテーマについて実践を試みました。

ワークショップによる学生たちの意識変化の検証を行うため、ワークショップ開始前アンケートと、ワークショップ内で使用するワークシートを比較したところ、以下のような傾向が見られました。

(1)学校での「学び」と社会(生活)との関連に、プラスの変化が見られた

ワークショップ開始前アンケートとワークシートの両紙で以下のような質問をしたところ、全体的にプラスの変化を確認できました。

Q. 学校での「学び」は社会に出てから役に立たないものが多いと思いますか?

結果:13名中4名にプラスの変化が見られた。2⇒6へと、評価が大きく変化した学生も1名いた。

評価(1~6)
「とてもそう思う(1)」~「全くそう思わない(6)」の6段階で評価

開催前アンケート(人)

ワークシート(人)

※開催前アンケートは1名が無回答

(2)「学びたいと思っていること」の具体化が進んだ

ワークショップ開始前アンケートとワークシートの両紙で以下のような質問をしたところ、ワークシートでは多くの学生が理由である「なぜ」をより具体的に書き込んでいる傾向が見られました。特に、自分の将来のやりたいことと結びつけてその理由を記述している学生が多くみられました。 記載内容の一部をご紹介します。

Q. あなたが現在「学びたい」と思っていることは何ですか? それはなぜですか?

ワークショップ開催前アンケート

ワークシート

教育開発、

経済/自分の興味のある分野につながっているから  

歴史/高校生まで苦手で、しっかり覚えられていないから

英語(語学)=できることの幅を広げるため   

教育開発=将来やりたいことの1つとつながるため。今興味を持っている分野であるため  

経済=自分の苦手な分野だけど知っておいた方が将来やりたいことにも活かせるのではないかと考えるため 教養としても。

オランダ教育/参加プロジェクトとのつながり

オランダ教育(特にイエナプラン教育)について学びたいです。参加プロジェクトにおける、コア概念が自立であり、オランダ教育ではその自立が重視されているからです。これを学ぶことにより良い活動につながることが見込めます。また、今日知った外国にルーツをもつ子どもたちのための環境作りにおいて参考になると考えています。【オランダは多民族国家であるから】

伝える力/子供の貧困について/どうすれば格差の再生産がおこらないのか、是正できるのか。

「貧困の子どもたちが、将来どうすれば抜けだせるのか」について。経済・教育・社会科学のあらゆる面から、貧困について学びたい。格差の再生産について、変えたいと思うし、どうにかしなきゃいけないと感じるから。

数学/知的好奇心(興味があるから) 

教育/将来、教育(子どもや人の成長)に携わりたいと考えているので 

数学⇒知的欲求を満たすため 

教育⇒将来的に教育か人の成長に携わりたいと考えているので、そのために必要だと思うものはすべて学ぶ。極論を言うと「人のため」になるものは全て学びたいと思っております。(現状を知ったり、理論を学んだり、現場に赴いたり、他の国の教育を知ったり)

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今回のワークショップ実施で見られた全体の傾向と課題

今回、ワークショップの企画意図も概ね実現し、参加者のワークショップそのものへの評価は全体的に高い結果となりました。ただし、今回の参加学生は教育に関わるNPOのボランティアメンバーということもあり、さまざまな実体験を通して将来の職業ややりたいことについて現時点で明確な考えを持っている方たちが平均的な学生よりも多かった可能性があります。また、NPOでの活動経験から、ディスカッションやワークシートへの取り組みを見ても資料への理解が早かった点も留意が必要です。

これらをふまえると、既に学習意欲や行動力がある層に対し、今回のワークショップの内容が「更なる学習意欲の向上」や「自分がやりたいことの深堀り(なぜそれをやりたいのか、を明確にする)」に有効であるとはいえますが、本ワークショップをより多様な学生たちに意義のあるものにするためには、さらなる改良が必要だと認識しています。

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今後に向けて

CO-BOでは、今回の実施結果をふまえてワークショップの改良を図っていきます。2015年度以降も多くの開催実績を積んでいきたいと考えております。

CO-BOのワークショップに関するご意見・ご要望はぜひお問い合わせフォームからお寄せください。

記事や調査結果の掲載・引用について
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