今年7月に文部科学省から2020年に向けた大学入試改革の具体的な方針が示された。その内容は大きく次の3つである。
これらに対して、高校では対応が求められるが、高校教員はどのように受け止めているのだろうか。その声はあまり聞こえてこない。
当研究所が実施した「第6回学習指導基本調査」では、2016年7~9月時点にはなるが、高校教員に対し「進路指導の課題」について選択式と記述式の双方でたずねている。その後公表された上記の大学入試改革の内容や今後一層進む少子化の状況に照らしてそれらの回答を見たときに、これからの進路指導に影響の大きいことは何だろうか。高校教員の声から今後の高大接続の論点を整理してみたい。
なお、本稿では、公立普通科(理数科、外国語科を含む)に絞って分析を行っている。
まずは、「進路指導の課題」についてたずねた統計データについて、四年制大学進学率別に課題の違いを概観してみよう。
教員が困難を感じていることとして高いのは、「1.生徒の学習や進路選択に向かう姿勢に関すること(図1①~④)」「2.家庭の経済状況に関すること(同⑤)」「3.大学入試制度や進学環境の変化に関すること(同⑦~⑨)」で、いずれも公立普通科教員全体の半数以上が困難さを感じている(「とても+やや困難を感じる」の割合)。それらを大学進学率別にみると、1と2の生徒に関する課題や家庭の経済状況については、大学進学率の低い進路多様校ほど困難を感じる割合が高い傾向がみられる。ただし、「努力しないでも入れる大学を選ぶ生徒が多い」だけは大学進学率「31~60%」で最も高くなっている。この学校群で、選抜性の低い大学への進学者が多いことを反映しているのだろう。大学進学率「81%以上」と「31~60%」との差は30ポイントを超える。同様に進学率別の差が大きいのが、「経済的な理由で希望の進路に進めない生徒への対応」で進学率「81%以上」と「30%以下」で38.4ポイントもの違いがみられる。これらは課題がかなり偏在していることが読み取れる。
一方、「3.大学入試制度や進学環境の変化に関すること」は、入試制度が複雑なことや入試の変化への対応、進学環境の変化が速いこと、といった項目になるが、これらは大学進学率「30%以下」では若干下がるが、その他の層ではあまり違いはなく6割以上の教員が困難さを感じている課題である。
図1 進路指導の課題(四年制大学進学率別〔公立普通科〕)
Q.生徒の進路指導を行う上で、次のようなことに対してどれくらい困難に感じますか。
注1)サンプル数は、81%以上:718名、61~80%:1,328名、31~60%:1,182名、30%以下:986名。
注2)-は、20ポイント以上の差がみられるもの。
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