テクノロジーとオーダーメイド教育が、
障がいを持つ子どもの学びの意欲を生む

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2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックには、期待されていることがある。この大会を機に、障がいを持つパラリンピアンの記録が、オリンピアンの記録を抜き始めるのではないかということだ。障がい者を援助するテクノロジーには、それだけ目覚ましい進歩が見られる。

内閣府の調べによれば、国民の6%は何らかの障がいを抱えているという。これまで、そうした障がいを抱えた子どもたちはいわゆる普通の学校で学ぶことも、自分ひとりで学ぶことも困難だった。しかし、タブレットなどのテクノロジーが教育現場に登場して、そうした人たちが学べる環境が少しずつ整いつつある。いずれはそういった環境で学んだ障がい者たちが社会に出れば、オリンピアンの記録を超えるパラリンピアンのように、普通の教育を受けた人々を上回るパフォーマンスを発揮するのではないだろうか。今回はそうした障がい者のための教育の最先端の事例をつくり、米国アップル社のWebサイトでも紹介された沖縄県立泡瀬特別支援学校の教員、山口飛(ひゅう)氏の取り組みを伝える。

【取材・執筆】 ジャーナリスト・林 信行
【企画・編集協力】   青笹剛士(百人組)

 特別支援学校に導入されるテクノロジー

世の中には普通の学校に通いながら、学ぶ意欲がないために授業を拒む子どもたちが大勢いる。その一方で、本当に学びたいと思っていても生まれ持った制約から、それが叶わない子どもたちも大勢いる。

目が見えない子どもは教科書を読むことができない。両腕を動かせなければ、教科書を読めてもページはめくることができない。そうした障がいを持つ子どもたちなどが、普通の学校に準じた教育を受けられ、学習上または生活上の困難を克服して自立が図られることを目的としている学校が「特別支援学校」だ。文部科学省によると、平成25年、特別支援学校は全国に1080校あり、13万2570人の生徒が在籍している。

山口飛氏(以下、山口氏)が勤める沖縄県立泡瀬特別支援学校は、小学部、中学部、高等部の3つが1つの学校に統合されており、スクールバスを備え、併設された民間の医療施設を含めると比較的大きな施設となっている。そのため、手足の自由が利かない肢体不自由者や医療的に常時観察が必要な生徒など重度な障がいを抱える生徒も多く受け入れており、中には知的障がいを伴う生徒もいる。

山口氏は同校の情報教育主任。生徒たちが学習を進めていく上でさまざまな困難があるので、その困難に対してテクノロジーでどういった支援ができるのか、学校の中で包括的に見ている立場だという。

 

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