調査室長コラム Ⅰ
第４回 小学校英語のゆくえ
ベネッセ教育研究開発センター 調査室長 木村治生 (2007/11/19更新）
文科省の調査によれば、すでに93.6％で何らかの英語活動をしている。年間平均実施時間数は、６年生で13.7時間であり、月に１～２回というところである（「小学校英語活動実施状況調査（平成17年度）」）。こうした状況を受けて、３月に中央教育審議会の学国語部会から「小学校の英語教育を充実する必要がある」という審議経過報告が出された。さらにその後、教育課程部会でも、高学年で週１回（年間35時間）程度の時間を確保する方向で調整が進められている。
それでは、この問題について、教員はどのように考えているのだろうか。ベネッセ教育研究開発センターでは、英語教育についての考えを聞くために、公立小学校の教務主任を対象に調査を行った（2006年７～８月、3,503名）。図は、（１）英語教育を行うこと、（２）必修にすること、（３）教科として扱うことの３点について、賛否をたずねた結果である。
この結果を見ると、行うこと自体は７割弱が賛成しており、概ね受け入れられていることが分かる。しかし、必修化は36.8％、教科化は24.3％しか賛成がいない。教員の意見としては、現状程度ならよいが、必修化までは同意できないというところであろう。
とはいえ、教員自身も英語の必要性は認識している。同じ調査で、「今後の国際環境を考えると、英語が話せるようになることは必要だ」は約９割が、「英語はできるだけ早い時期から学ぶのがよい」は６割以上が肯定している。ただし、「授業をあと１時間増やせるのなら『英語』がよい」は、４人に１人しか肯定していない。必要性を認めつつ、二の足を踏んでいる様子だ。
教員がこのように考える背景として、英語教育を行うための資源が十分でないことが一因としてあるだろう。この調査でも、教員の英語力、ＡＬＴの来校頻度、時間数、カリキュラム、研修の機会など、あらゆるものが「十分でない」という回答だった。資源が不足する状況で、現場に実施を強いるのは無責任といえる。必修化するとしても、すべての学校で充実した活動を展開するためには、適切に条件整備を進める必要があると考える。
※初出：月刊「授業つくりネットワーク」2007年１月号（学事出版）
