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Benesse発 2010年「子どもの教育を考える」
このコーナーでは、教育のあるべき姿をベネッセ教育研究開発センターと、皆さんと共に考え、創りあげていきます。
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『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』更新終了のお知らせ

『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』は、2010年3月31日をもって、更新を終了させていただきました。
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トップページ > 研究員リポート > データからみる今と未来 第8回

研究員リポート
データからみる今と未来

第8回 教員勤務の実態(2)

ベネッセ教育研究開発センター 鈴木 尚子 (2007/7/18更新)

 前回は、教員の勤務が正規の勤務時間におさまらず、時間外勤務が長い状況を示した。職階別にみた場合に、とくに教頭・副校長に業務が集中しているようすがみられた。それでは、そのほかに、どのような立場の教員の勤務時間が長いのだろうか。今回は、部活動の顧問をしているかどうかによる違いと年齢層による違いに焦点をあててみてみよう。

1.中学校での部活動の指導

 学校段階別にみた際に、中学校教員の残業時間が小学校や高校よりも長いことがわかった。この理由の1つとして考えられるのは部活動である。そこで部活動の顧問をしているかどうかによって業務時間量がどのように異なるのかを10月通常期のデータからみてみよう(図表4)。勤務日の残業時間量について比べると、運動部の顧問をしている教諭は、顧問をしていない教諭よりも30〜40分長い。持帰り時間量を合わせると、差が顕著にみられる。休日は授業などがない分、部活動を長めに行うせいか、さらに差が大きくなる。部活動顧問となっても当然、授業準備や成績処理などを減免されることはない。顧問を任される教員(特に運動部顧問)の負担の大きさがあらためて確認される結果となった。

 教科の学習以外で生徒とかかわりながら交流が深まるなど、部活動が指導の面でも大きな役割を果たしていることは一般的に知られている。一方で、指導する教員にとって、部活動が大きな負担の1つになっていることも結果から読み取ることができる。今後の学校における部活動のあり方や位置づけは再検討が必要なのではないだろうか。

図表4:10月通常期の勤務日および休日の残業時間量・持帰り時間量(中学校教諭・講師 顧問の有無別)

時間:分

勤務日 休日
残業時間量
持帰り時間量
持帰り時間量+
残業時間量
残業時間量
持帰り時間量
持帰り時間量+
残業時間量
運動部顧問
2:21
0:21
2:42
1:53
1:59
3:53
文化部顧問
1:50
0:23
2:14
1:01
1:18
2:19
顧問していない
1:47
0:16
2:03
0:35
1:04
1:39
2.年齢層による業務負担の違い

 さらに、年齢による差はどれくらいあり、またその差がどのような業務によるものかを小・中学校教諭のデータをもとに確認してみよう(図表5)。ここでは、正規の勤務時間に残業時間を加えた労働時間(持帰りを含まない)の内訳をみてみる。

 まず、全体の労働時間(持帰りを含まない)量をみてみよう。30歳以下は11時間16分、51歳以上は10時間11分と、30歳以下の教諭は51歳以上の教諭より1時間以上長い。教員としての経験が短い最初の数年は、特に負担が大きいようだ。

 では、若い教諭はどのような業務に時間をかけているのだろうか。内訳をみれば、「成績処理」や「授業準備」、「部活動・クラブ活動」などの業務で年齢による差が大きい。例えば「授業準備」は30歳以下の小学校教諭が1時間39分かかっているのに対し、31〜40歳の小学校教諭が1時間04分、41〜50歳の小学校教諭53分、51歳以上の小学校教諭58分となる。同じ業務を行うにあたっても、経験を重ねるにつれ、短時間ですむようになることがわかる。中学校教諭はこれに「部活動」が加わり、若い教諭ほど積極的に顧問を担っているため、労働時間が長くなる。一方で「会議・打ち合わせ」「事務・報告書作成」などは41〜50歳の教諭で長いなど、校務分掌などによって負担が分散されるような工夫が行われているようだが、それでも若い教員よりも時間の面で負担は少ない。とくに最初の数年は1つ1つの業務に時間がかかるようだ。

 学校現場でよく耳にするのが、教員の年齢構成の問題である。90年代に教員採用を抑制していたこともあり、中堅層の教員が少ない。このため、若い教員に業務が集中しやすくなるという物理的な負担のほか、年齢が近くて相談しやすい先輩教員が少ないことで若い教員が精神的な負担を感じやすいということもあるという。ほとんどの教員の場合、1年目からクラスを受け持ち、授業準備や成績処理などの業務を任され、経験豊富な教員と同じように専門性を発揮することが求められる。こうした特性を持つ教員の仕事では、特に若い教員に向けたサポートが重要だろう。現状では、そのような体制が整っている自治体・学校ばかりではないようだ。

 このほかにも、同じ図表5からは、教員が十分に休憩が取れていない実態を見て取ることができる。教員は勤務時間中に45分間の休憩をとることになっている。しかし、実際にとった時間をみると、どの年齢層でも10分以下となっている。児童・生徒の「給食指導」があるために、お昼の時間にも休憩をとることができないのが現状だ。一方で、夕方の時間などに休憩が設定されていても、連絡帳のチェックや成績処理などに時間をとられるのが実際のようだ。

図表5:10月通常期勤務日・1日あたりの労働時間(持ち帰りを含まない)の内訳(教諭の年代別)

時間:分

小学校 中学校
30歳以下
31〜40歳
41〜50歳
51歳以上
30歳以下
31〜40歳
41〜50歳
51歳以上
朝の業務
0:34
0:35
0:31
0:29
0:37
0:35
0:33
0:31
授業
4:00
4:05
3:52
3:55
3:21
3:20
3:09
3:08
授業準備
1:39
1:04
0:53
0:58
1:40
1:09
1:06
1:05
学習指導
0:07
0:10
0:09
0:10
0:05
0:05
0:05
0:05
成績処理
0:49
0:38
0:34
0:37
0:43
0:33
0:33
0:35
生徒指導(集団)
1:22
1:23
1:18
1:13
1:11
1:14
1:07
1:00
生徒指導(個別)
0:03
0:04
0:04
0:05
0:13
0:15
0:15
0:14
部活動
0:11
0:09
0:07
0:05
1:03
0:58
0:49
0:35
生徒会指導
0:04
0:04
0:04
0:03
0:10
0:08
0:06
0:06
学校行事
0:33
0:36
0:34
0:31
0:45
0:46
0:44
0:47
学年・学級経営
0:18
0:16
0:14
0:12
0:33
0:34
0:27
0:20
学校経営
0:08
0:09
0:21
0:16
0:07
0:11
0:21
0:17
会議・打合せ
0:29
0:31
0:34
0:32
0:20
0:23
0:26
0:24
事務・報告書作成
0:06
0:08
0:18
0:15
0:12
0:13
0:20
0:18
校内研修
0:12
0:12
0:12
0:10
0:05
0:04
0:04
0:03
保護者・PTA対応
0:06
0:06
0:05
0:04
0:07
0:07
0:06
0:06
地域対応
0:00
0:00
0:00
0:00
0:00
0:00
0:00
0:00
行政・関係団体対応
0:00
0:00
0:00
0:00
0:00
0:00
0:01
0:01
校務としての研修
0:13
0:07
0:07
0:05
0:12
0:08
0:06
0:05
会議
0:03
0:04
0:06
0:04
0:05
0:08
0:10
0:08
その他の校務
0:08
0:10
0:14
0:15
0:14
0:13
0:15
0:17
休憩・休息
0:05
0:04
0:06
0:07
0:06
0:05
0:08
0:09
合計
11:16
10:42
10:28
10:11
11:53
11:15
10:53
10:17

児童・生徒の指導に直接的にかかわる業務
6:58
7:09
6:42
6:35
7:27
7:23
6:52
6:30
児童・生徒の指導に間接的にかかわる業務「
2:47
1:59
1:41
1:48
2:58
2:17
2:07
2:02
学校の運営に関わる業務及びその他の校務
1:22
1:26
1:55
1:41
1:19
1:24
1:45
1:35
外部対応
0:07
0:07
0:07
0:06
0:08
0:09
0:09
0:08
まとめ

 ここで示すことができたのは、約6万人の教員のデータから浮かび上がる課題のうち、ほんのわずかな側面にすぎない。教員の労働時間量は、各教員が担う校務分掌、学校の規模、担任するクラスの規模、地域の特性等などさまざまな要因によって影響される。また、データに表れない要因ももちろんある。一方で、これまでみてきたように今回の結果でわかる課題も多い。

 「教員勤務実態調査」と同時に行われた諸外国調査研究会による「諸外国の教員給与に関する調査研究」(文部科学省のホームページへ)でも、日本の教員が担う業務の範囲は授業から事務、地域への対応まで広範にわたっていることが指摘された。そのうえ、地域との連携や個に応じた指導など、教員の業務は近年ますます複雑化してきている。今回の「教員勤務実態調査」では、上記の背景を映し出すかのように、児童・生徒の指導や授業準備にかける余裕がない状況が明らかになった。

 日本の子どもたちの学習への意欲の低下が指摘される今、子どもの発達や成長に大きな影響を及ぼす役割を担う教員の業務そのものの見直しや教員をとりまく環境の見直しを行う時期がきている。「勤務実態調査」の結果をきっかけに、学校組織や教員の業務についての見直しがなされることを期待している。

 ※なお、本調査結果は「勤務実態調査(小・中学校調査)報告書」勤務実態調査(高等学校調査)報告書」として刊行されている。データの算出方法、用語の定義、詳細な数値等についてはそちらをご覧いただきたい。また、調査結果は文部科学省の中央教育審議会の議論の基礎資料となっている。本調査に基づいて提出されたワーキンググループによる答申などは文部科学省のホームページに掲載されている。

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