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Benesse発 2010年「子どもの教育を考える」
このコーナーでは、教育のあるべき姿をベネッセ教育研究開発センターと、皆さんと共に考え、創りあげていきます。
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『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』更新終了のお知らせ

『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』は、2010年3月31日をもって、更新を終了させていただきました。
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研究員リポート
データからみる今と未来

第20回 子どもの将来と教育(2)−現在の仕事の充実感と子ども時代の体験との関係から考える

ベネッセ教育研究開発センター 山田剛 (2008/2/6更新)

 レポート(1)では、「社会人基礎力」の12の能力要素について、企業はどちらかといえば「主体性」「実行力」「課題発見力」を求めているのに対して、若者はむしろ自分の強みを「チームで働く力」に分類される「柔軟性」「傾聴力」「情報把握力」と思っていることを示した。レポート(2)では、社会人として充実した仕事生活をおくることと、子ども時代の体験との関係を見ることで、社会で求められる力を育てるためのヒントを探ることにする。

将来の目標をもって仕事をしている若者は仕事に充実感を感じている

 「若者の仕事生活実態調査」(2006年ベネッセ教育研究開発センター)のなかで、25〜35歳の若者の仕事生活での充実感と小中学生のころの体験との関係がデータで示されている。この調査では、13の項目について「ふだんの仕事のなかでできているか」を聞き、仕事で充実感を感じる若者とそうでない若者との差を調べている。図表4は、特に強い関係が見られた3つの項目の結果を示している。

図表4:ふだんの仕事のなかでできていること(仕事の充実感レベル別)

図表4:ふだんの仕事のなかでできていること(仕事の充実感レベル別)

※グラフの%は「よくできている」「まあできている」の合計
※充実感は「仕事をしていて感じること」をたずねた9項目より算出
若者の仕事生活実態調査」(2006年ベネッセ教育研究開発センター)

 「将来の目標をもって仕事をすること」については、「充実感・高」の若者の63.1%が「できている(よく+まあ)」と答えているのに対して、「充実感・中」は41.7%、「充実感・低」は24.5%と、「充実感・高」と「充実感・低」の若者では約40ポイント近くの差がある。続いて「自分の考えをわかりやすく説明する」(充実感・高と低で28.9ポイント)、「自分から率先して行動すること」(充実感・高と低で27.8ポイント)も差が大きい。
 これらの項目は、表現こそ異なるが、レポート(1)で企業が人材像として求めていた「主体性」「実行力」「課題発見力」とほぼ重なる内容といえよう。ふだんの仕事でこうしたことができることは、とても重要なのである。

子ども時代の体験と今の仕事での充実感は関係している

 次に「仕事の充実感」と関連が見られた3項目「将来の目標をもって仕事をすること」「自分の考えをわかりやすく説明すること」「自分から率先して行動すること」について、自己評価(「できている」「まあできている」と「あまりできていない」「ぜんぜんできていない」)別に見ると、小中学生のころの体験の有無に差があることが明らかになっている。

 図表5は、それぞれの項目で差が大きかった小中学生のころの体験(上位3つ)を示している。たとえば、図表5の(1)を見ると、「将来の目標をもって仕事をすること」について自己評価が高いグループと低いグループで、「親と将来のことについて話をすること」という体験で最も差があることがわかる。その差はグループ間で18.5ポイントである。それに続いて差があった体験は、「自分のやりたいことを大切にすること」「親や学校の先生以外の大人と話をすること」となっている。

図表5:小中学生のころの体験との関係(仕事の態度・能力に対する自己評価別)

(1):将来の目標をもって仕事をすることの自己評価別

図表5(1):将来の目標をもって仕事をすることの自己評価別

(2):自分の考えをわかりやすく説明することの自己評価別

図表5(2):自分の考えをわかりやすく説明することの自己評価別

(3):自分から率先して行動することの自己評価別

図表5(3):自分から率先して行動することの自己評価別

※「自己評価・高」は「よくできている」「まあできている」の合計
※「自己評価・低」は「あまりできていない」「ぜんぜんできていない」の合計
若者の仕事生活実態調査」(2006年ベネッセ教育研究開発センター)


 これらのグラフを見ると、全体として小中学生のときの体験が大人(25〜35歳の若者)になってからの仕事に対する自己評価と関係していることが確認できる。どのような体験が仕事に対する自己評価と関係しているかを見ると、「親と将来のことについて話をすること」「親や学校の先生以外の大人と話をすること」など、親も含めて大人と関わる項目が上位にあがっている。本調査は小中学生のころの体験を31の項目*1で聞いており、それら多様な体験のなかから、こうした項目が上位になっていることは注目される。子どもの将来の仕事生活にとって、自分の年齢とは異なる他者とコミュニケーションすることが重要な機会となる可能性を読みとることができる。

まとめ−求められる社会的な体験−

 経済産業省の社会人基礎力研究会の座長を務める諏訪康雄教授(法政大学)は、情報誌Between2007秋号(進研アド発刊)でのインタビュー*2で、社会人基礎力を身につける機会が減っている理由として、1)高学歴化により教育期間が延びたこと 2)自営業者の割合が減ったこと 3)核家族化が進み地域社会への参加が減ったことなどをあげ、こうしたことが、子どもが働く大人の姿を見たり、社会的な体験をすることが減り、社会の多様な人々とうまくやっていく力を身につける機会を逸することになると指摘している。

 ここで紹介した「若者の仕事生活実態調査」の結果は、まさしく、親やそれ以外の大人との社会的体験を小さいころから経験することが、社会人として充実した仕事生活をおくることと関係していることを示していた。特に地域社会が変化し、異なる世代と交流する場が減ってしまったことを考えると、意図的に機会を設けなければなるまい。各学校段階における進路指導や、職場体験を含む直接的なキャリア教育に加え、その土台に生活場面における社会的な体験の充実が求められている。

*1 体験として「家で勉強すること」「部活動に熱心に取り組むこと」、親の様子として「子どもの教育に熱心だった」「誇りをもって仕事をしていた」、親のしつけとして「規則正しく生活すること」「友だちを大切にすること」など、31項目にわたる経験を聞いている。

*2 「『社会人基礎力』の育成を通して大学の教育力を向上させる」Beteen2007秋号

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