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Benesse発 2010年「子どもの教育を考える」
このコーナーでは、教育のあるべき姿をベネッセ教育研究開発センターと、皆さんと共に考え、創りあげていきます。
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『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』更新終了のお知らせ

『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』は、2010年3月31日をもって、更新を終了させていただきました。
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研究員リポート
データからみる今と未来

第25回 「教育不安」の高まりが子育て生活に与える影響―「第3回子育て生活基本調査〜小学生・中学生の保護者を対象に〜」から

ベネッセ教育研究開発センター 邵勤風 (2008/6/4更新)

 ベネッセ教育研究開発センターでは、保護者の子育て生活の実態、しつけや教育に関する意識を捉えることを目的として、2007年9月に、首都圏の小学1年生から中学3年生を持つ保護者約7,300名を対象に「第3回子育て生活基本調査」を実施した(1998年に、第1回目、2002年に第2回目調査を行った。詳しい調査概要はこちら(「第3回子育て生活基本調査報告書」)にあります)。このコーナーでは、2回にわたり、本調査から見られた特徴的な結果を考察していきたい。今回は母親の教育に対する不安が高まったことが子育て生活や子どもの成長にどのような影響を与えているのかを、調査データを取り上げながら、検討しよう。

「教育不安」の高い母親は「子どもへの関与」も強い

 家庭の教育方針をたずねた8項目のうち、教育に対する不安について聞いた「子どもの教育・進学面では世間一般の流れに乗り遅れないようにしている」と「子どもの将来を考えると、習い事や塾に通わせないと不安である」の2項目は1998年から2007年までの9年間、肯定する割合が高まっている。また子どもに対する関与についてたずねた「子どもがすることを親が決めたり、手伝ったりすることがある」は、肯定する割合も高くなり、「勉強のことは口出しせず、子どもにまかせている」の項目は、肯定率が減少しつづけている(詳細はこちら(「第3回子育て生活基本調査・速報版」)です)。これらの結果から、母親の教育に対する不安が高まり、子どもへの関与が強まっていることが明らかになった。

図1:教育への不安度別の子どもへの関与度

図1:教育への不安度別の子どもへの関与度


 次に、「教育不安」と「子どもへの関与」との関係を詳しく見てみよう。「教育不安」に関する2項目と「子どもへの関与」に関する2項目からそれぞれの総得点を算出し、教育への不安度と子どもへの関与度をそれぞれ高中低3群に分けて分析を試みた。図1から分かるように、教育への不安度が高い群は子どもへの関与も強いという結果が得られた。教育に対する不安な気持ちから、つい子どものことを子どもに任せられなくなり、手伝ったりしてしまうだろう。

関与度が高い母親は子どもの生活習慣の定着が不十分と認識

 学習だけではなく、基本的な生活習慣を含めた自立も、子どもの成長を測る大変重要な側面である。そこで、本調査では、基本的な生活習慣についても12項目をたずねた。2002年から2007年の5年間、ほとんどの項目では子どもが「一人でできる」との回答が減少し、母親が子どもの生活習慣の自立が低下していると認識している(詳細は「第3回子育て生活基本調査」―『第1章 毎日の子育て生活』をご覧下さい)。

図2:子どもへの関与度別の生活習慣の自立状況

図2:子どもへの関与度別の生活習慣の自立状況


 ここで、前述した母親の子どもへの関与度と子どもの生活習慣の自立との関係を調べたい。図2は子どもへの関与度の高中低3群別にみた子どもの生活習慣の自立状況である。たずねた12項目はすべて有意差が見られた。子どもが「一人でできる」(「完全に一人でできる」+「だいたい一人でできる」)の比率を見ると、「計画的に勉強すること」は、子どもへの関与度の高い群で36.0%、低い群で61.4%となった。両群では25.4ポイントの差が開いている。「遊んだあとのかたづけや部屋の整理整頓」は、子どもへの関与度の高い群で47.2%、低い群で61.3%となり、両群では14.1ポイントの差が見られた。すべての項目において、子どもへの関与度の高い母親が子どもの「一人でできる」の比率が低く、生活習慣の自立が不十分であると認識している。子どもの生活習慣の自立を促したり、生活習慣を身につけるように適切にかかわったりすることが大切だが、母親の過度な関与は逆に子どもの自立を妨げることになる。子どもができないから関与せざるを得ないといった面があることも推察できるが、子どもの自立を促すための適切なかかわりについてはすべての保護者が考えなければならない問題だろう。

まとめ

 ここでは、ごく一部の結果を紹介したが、今回の調査結果の全体を俯瞰すると、やはり母親の教育に対する不安が高まったことが、結果につながっているように思える。
 なぜ母親が教育に対する不安がこれほど高まったのだろうか。文部科学省は学力低下に対する社会的な不安の高まりに対応するために、2002年、「確かな学力の向上のためのアピール『学びのすすめ』」を公表し、その後、学力向上施策を講じてきた。その結果、保護者の学力低下への不安は軽減されるはずだったが、今回の調査結果は学力低下に対する不安を含めた子どもの教育への不安が逆に高まったことが分かった。国の施策が保護者に十分に伝わっていない可能性がある。
 2011年には小学校で、2012年には中学校で、新学習指導要領が全面実施となる。授業時数や教える内容が増える。国として子どもたちの学力をきちんと保障すると、保護者に伝える努力が必要である。また、保護者としては、子どもが健全な成長ができるように、過度に不安感を高めることなく、適切にかかわっていくことも大切ではないだろうか。



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