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Benesse発 2010年「子どもの教育を考える」
このコーナーでは、教育のあるべき姿をベネッセ教育研究開発センターと、皆さんと共に考え、創りあげていきます。
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『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』更新終了のお知らせ

『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』は、2010年3月31日をもって、更新を終了させていただきました。
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研究員リポート
データからみる今と未来

第46回 教師と子どもの良好な関係が教育格差を克服する ― 「教育格差の発生・解消に関する調査研究」から

ベネッセ教育研究開発センター 佐藤暢子 (2009/7/1更新)

 学力格差の問題は、単に教育の問題ではなく「格差社会」に起因する社会問題である。しかしだからといって、学校がこの問題に対して無力なわけではない。ベネッセ教育研究開発センターがお茶の水女子大学と共同で行った「教育格差の発生・解消に関する調査研究」(詳細は「教育格差の発生・解消に関する調査研究報告書」を参照)では、教育的に不利な環境にある子どもたちの学力の底上げに成功している学校を特定して、そのような学校にはどんな特徴があるのか、子どもたちはどのように学んでいるのかを探った。

 「教育格差の発生・解消に関する調査研究」では、全国の小学5年生を対象にして、学力テスト(算数・国語)を行うとともに、子どもたちとその保護者に学習実態や意識を探るアンケート調査、児童の担任の先生と学校長へのアンケート調査も同時に実施した。つまり子どもたちの学力格差はどのように形成されるのか、本人要因に加えて家庭的背景、学校特性、地域特性の3つの視点から切り込んだわけである。

3つの視点

 これらの調査結果を総合的にみることで、学力格差が生じる要因としてもっとも重要なのは、やはり家庭を中心とした環境要因であることを改めて確認できた。しかし同時に、家庭の教育環境の面では不利な状況にある子どもたちの学力を、一定以上に引きあげている学校が存在していることも確認できた。ここでは、そのような学校の特徴を洗い出すことで、学校が実行できる学力格差解消の手立てを考えてみたい。

教育的に不利な環境にある子たちの学力底上げに成功している学校

 欧米には「エフェクティブ・スクール」(「効果のある学校」)という概念がある。教育格差を克服し、子どもの学力を高めることに成功している学校を指すものである。ここでは、大阪大学の志水宏吉教授が行った分析を紹介しながら、「効果のある学校」の特徴を描き出すことにしよう。
 志水教授は、以下のような手順で本調査の対象校から「効果のある学校」を導き出している。

  1. 教育環境を表す3つのキー「家庭の年収500万円以上/500万円未満」、「母親が大卒/非大卒」、「学習塾への通塾/非通塾」で、子どもたちをグルーピングする。
  2. より不利だと思われるほうのグループ(「家庭の年収が500万円未満」「母親が大卒でない」「学習塾に通っていない」)の児童が学力テストで一定の成果をあげている学校を「効果のある学校」とみなした。具体的には、国語と算数の学力テストの合計得点が、100点満点換算で50点以上となる児童の割合が6割を超えた学校を指す。ちなみに今回の調査の学力テストの平均点は57点であり、調査対象校42校のうち、13校が「効果のある学校」に該当することになる。

 「効果のある学校」とそうでない学校における児童の特徴を、子ども向けアンケート調査の結果からみてみよう(表1)。両者の間で大きな違いがみられたのは、児童が感じている教師との関係である。「先生は私の気持ちをわかってくれている」「先生は私に期待をかけてくれる」と感じている児童の比率は、「効果のある学校」では、そうでない学校を15ポイントほど上回っている。また、「みんなの前ではっきりと意見が言えるほうだ」「自分の言うことをまわりの人はわかってくれる」など、友人たちも含めた人間関係が良好であることがうかがえる。

表1:効果のある学校とない学校との比較

表1:効果のある学校とない学校との比較
学校の効果は、宿題以外の家庭学習態度にも及ぶ

 さらに注目したいのは、学校での学習のみならず、家庭での学習や勉強全般に対する考え方にまで明らかな差異が認められたことである。 家庭学習に関してみてみると、「勉強の内容を自分なりにわかりやすくノートにまとめる」や「苦手な教科もわかるまで勉強する」の数値は、「効果のある学校」ではともに16ポイントほど高くなっている。また「勉強する時間を自分で決めて実行している」でも大きく上回るなど、学習に向かう態度が自律的である。

 ほかにも差が見られた項目を報告書に掲載しているので、興味を持った方はぜひご覧いただきたい(分析編 第3章 階層差を克服する学校効果 表3-3)。 これらのデータから、「効果のある学校」が行っているのは、「宿題」のかたちで児童の家庭学習をコントロールしているというような単純なことではないとわかる。子どもたちに、学ぶための基本姿勢を身につけさせることに成功している様子がうかがえる。

 こうしてみてみると、学力格差を克服するために教師がまず行うべきことは、子どもたちとの信頼関係の構築であるといえそうだ。「効果のある学校」の子どもたちは、教師への信頼感、友人たちとの寛いだ関係をベースに、勉強に対するポジティブな姿勢を育み、学校内外において適切な学習習慣を身につけているのである。



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