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『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』更新終了のお知らせ

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トップページ > 研究員リポート > 国際基準からみた日本の教育 第4回

研究員リポート
国際基準からみた日本の教育

第4回 日本の数学的リテラシーの課題 〜PISA2003の結果と諸外国カリキュラム比較を通じて〜

ベネッセ教育研究開発センター (2007/4/18更新)

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 国際調査OECD/PISAにおいて、日本の数学的リテラシー*1の総合順位はPISA2000が1位、PISA2003が6位であった。統計的にはいずれも1位グループに属しているので問題ないと見る一方、結果を詳細に分析してみると、OECD平均より正答率の低い問題に特徴が見られた。本稿では、日本の子どもが不得意とする問題で、逆に好成績を修めた国やその他諸外国の数学教育カリキュラムを研究し、日本の数学教育の課題について考察したことを一部紹介する。日本の数学教育では、1)諸外国に比べて「統計・確率」の学習量が少なく、2)「数学を使って問題解決する」という観点が欠けている、という点が明らかになった。

日本の子どもの正答率が低い問題の特徴

 公表データ*2から、OECD平均より日本の正答率が低かった問題11題を、正答率の低い順に並べると表1のようになる。11問中、半分以上は、数学的な内容が「不確実性」、数学的プロセスが「関連付け」*3の問題であった。

【表1 PISA2003 数学的リテラシー 日本の正答率が低かった問題】
 
ユニット
問い番号
数学的な内容
数学が用いられる状況
数学的プロセス
問題の形式
公開・非公開
正答率
日本
正答率
OECD
正答率
無答率
日本
無答率
OEDC
二酸化炭素 問3 科学的 関連付け 短答 9.1 32.1 -23.0 23.6 24.7
身長 問2 不確実性 教育的 熟考 複合選択肢 13.5 17.9 -4.4 0.3 1.6
二酸化炭素 問2 不確実性 科学的 関連付け 短答 28.5 54.3 -25.8 14.0 16.9
盗難事件 問1 不確実性 公共的 関連付け 自由記述 公開 29.1 29.5 -0.4 14.4 15.0
宝くじ 問1 不確実性 公共的 関連付け 複合選択肢 36.0 41.6 -5.6 0.7 1.6
交通手段 問1 不確実性 私的 熟考 複合選択肢 42.9 49.9 -7.0 0.7 2.0
身長(背が伸びる) 問2 関係と変化 科学的 関連付け 自由記述 公開 43.3 44.8 -1.5 29.3 21.1
人口ピラミッド 問1 関係と変化 科学的 関連付け 自由記述 46.5 64.9 -18.4 9.7 14.1
スケートボード 問1 私的 再現 短答 公開 58.5 72.0 -13.5 10.6 4.7
10 輸出 問1 不確実性 公共的 再現 求答 公開 64.6 78.7 -14.1 6.5 7.5
11 為替レート 問1 公共的 再現 短答 公開 79.1 79.7 -0.6 7.6 6.6

 公開問題の中で正答率が一番低い「盗難事件」は、日本の正答率が29.1%(無答率14.4%)なのに対し、公表データの上位3位は、フィンランド45.8%(同4.4%)、カナダ41.5%(同5.2%)、オーストラリア40.1%(同9.6%)であった。この問題では、棒グラフの解釈として「激増した」という表現が適切か否か、数学的な根拠に基づく判断とその根拠の説明力が問われている。日本の子どもは「激増した」の意味を、数学で学んだ「増加率(割合)」や「グラフ表現」に関連付けて、記述説明する力が不足していると思われる。

<PISA2003 数学的リテラシー 公開問題 「盗難事件」>

PISA2003 数学的リテラシー 公開問題 「盗難」

 あるTV レポーターがこのグラフを示して、「1999 年は1998 年に比べて、盗難事件が激増しています」と言いました。このレポーターの発言は、このグラフの説明として適切ですか。適切である、または適切でない理由を説明してください。

 公開問題の中で二番目に正答率の低い「身長(背が伸びる)」も関連付けの問題で、年齢別男女別の平均身長のグラフを見て、「増加の割合が低下した」ことをグラフがどう表現しているか、言葉と数学の知識を関連付けて根拠を説明する力が問われている。日本は正答率43.3%(無答率29.3%)であまり高くなかった。この問題で好成績を修めた上位3位は、オランダ77.7%(同0.3%)、フィンランド68.2%(同7.0%)、カナダ64.0%(同7.2%)であった。

 <PISA2003 数学的リテラシー 公開問題 「身長(背が伸びる)」>

<PISA2003 数学的リテラシー 公開問題 「身長」>

問2 女子の平均身長について、12 歳以降はその増加の割合が低下しています。このことがグラフでどのように示されているか、説明してください。

一方、上記2題で上位の国々の無答率は1ケタで、日本より極端に低いことがわかる。PISA2003全問題のうち日本の無答率30%以上の問題を抽出して無答率が高い順に並べた表2を見ると、全7題とも自由記述形式という特徴も見られた。

【表2 PISA2003 数学的リテラシー 日本の無答率が高かった問題】
 
ユニット
問い番号
数学的な内容
数学が用いられる状況
数学的プロセス
問題の形式
公開・非公開
無答率日本
人口ピラミッド 問3 変化と関係 科学的 熟考 自由記述 49.1
競技用トラック 問2 空間と形 公共的 関連付け 自由記述 40.7
競技用トラック 問3 空間と形 公共的 熟考 自由記述 34.8
温度計コオロギ 問2 変化と関係 科学的 熟考 自由記述 32.7
第3の辺 問1 空間と形 Intra-M 熟考 自由記述 30.8
歩行 問2 変化と関係 私的 関連付け 自由記述 公開 30.7
大統領の支持率 問1 不確実性 公共的 関連付け 自由記述 公開 30.3

 上記2題も自由記述形式だったことを考えると、弱点が見えてくる。

 日本の子どもは、現実世界と数学世界を関連づけて考え、その考えを適切な言葉や記号で書いて表現することを苦手としている点が浮き彫りになった。

*1: PISA2003調査−数学的リテラシー
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05071101/001.pdf
*2: 「生きるための知識と技能 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2003年調査国際結果報告書」2004年12月、ぎょうせい、国立教育政策研究所編 p.80, 表2.5.1
*3: 数学的リテラシーの枠組みは、1)数学的な内容(包括的アイデア)、2)数学的プロセス(能力クラスター)、3)数学が用いられる状況、の3つの側面によって特徴づけられている。詳細は、詳細は、*1のp.10、*2, p.14, 表1.4.1を参照。

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