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Benesse発 2010年「子どもの教育を考える」
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『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』更新終了のお知らせ

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研究員リポート
国際基準からみた日本の教育

第6回 シチズンシップ教育(市民性教育)(1)

ベネッセ教育研究開発センター (2007/6/12更新)

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 21世紀に入り、世界の様々な地域でシチズンシップ教育(市民性教育、市民教育とも訳される)の動きが活発化し、その動向が注目されている。ところが日本人にとって「シチズンシップ教育」の本質は非常にイメージしにくいものである。そこで本稿では、シチズンシップとは何か?シチズンシップ教育は何で構成されるか?という視点から考察をおこない、事例紹介とともにシチズンシップ教育の本質を浮き上がらせていこうと思う。

世界の様々なシチズンシップ教育動向

 日本では、国がシチズンシップ教育を必修教科に定めてはいないのだが、教科として実践している事例がいくつかある。2001年にお茶の水女子大学附属小学校が立ち上げた新教科「市民」や、2006年に品川区が区内の小・中学校でスタートさせた新教科「市民科」がそうだ。この元を探ると、古くはイギリスのシチズンシップ教育に辿りつく。イギリスでは以前よりシチズンシップ教育につながる実践を積み上げ、2002年には新教科「シチズンシップ」が国の法制化を受けて必修化された。これらは、国家主導のシチズンシップ教育事例である。

 一方で、国家を超えた組織・地域の提唱するシチズンシップ教育には次のような事例がある。戦争のない平和なヨーロッパ社会の構築をめざす欧州評議会(Council of Europe; 略称CoE)は、1997年に多文化状況やEU発足による域内統合に対応するために民主的市民教育(EDC※1)を推進する活動を開始した。欧州連合(EU)・欧州委員会(EC)では、2000年に「2010年までにEUを世界で最も競争力と原動力のある知識基盤の経済主体とし、持続的な経済成長でより多くの良い仕事をもたらし、一層の社会の結束性をもたらすこと」を目標とするリスボン戦略をスタートさせた。その一環として能動的シチズンシップの教育訓練サポートを行い、さらにシチズンシップ教育の成果を測定する指標開発に取り組んでいる。また、経済協力開発機構(OECD)では、2005年に教育がもたらす社会への成果について検証するSOLプロジェクト※2を発足させ、公民的社会的関与(シチズンシップとほぼ同義)について検証中である。

 このように、世界的な動向としてシチズンシップ教育を重視する傾向に拍車がかかっているが、その背景は、平和構築から経済成長まで幅広い。とくにヨーロッパでは、国家を超えた国際組織がシチズンシップ教育の重要性を認識し活動を行なっている。それでは、これらのシチズンシップ教育のめざすシチズンシップとは何か?について考えていく。

時代や地域とともに変わる、シチズンシップの概念―4つの大きな流れ

 現在の世界には様々なシチズンシップ概念が存在しているが、それらは大きく4つの概念グループに分けられるといえよう。下図1にその概念グループの変遷を矢印で示した。

【図1 世界のシチズンシップ概念の変遷―イギリス、アメリカ合衆国、Council of Europe(CoE)を例に】

図1 世界のシチズンシップ概念の変遷―イギリス、アメリカ合衆国、Council of Europe(CoE)を例に

 17・18世紀の市民革命以降、まず「自由主義的シチズンシップ」という概念が登場する。絶対王政のもと国王・貴族の支配で苦しんでいた人々が、自ら市民としての権利を求めて立ち上がったからだ。市民は、信仰・言論の自由や私的財産の所有、参政権、社会福祉など、市民権を次々に獲得していった。このころのシチズンシップとは[市民権]、つまり権利そのものを意味していた。しかし世界の急速なグローバル化等にともない、福祉国家は経済的な壁にぶつかり崩れていく。市民に平等に福祉を行なっていては国が立ち行かなくなってきたからだ。小玉重夫氏によれば、1990年代になると「第3の道」という政治路線のもと、これに呼応するようにアメリカ合衆国では「ボランティア的シチズンシップ」が、イギリスでは「政治的シチズンシップ」が現れてきたという※3。国家の福祉政策に頼らないで自分たちがコミュニティーに参加し課題解決をしていく、そんな能動的な市民の登場を時代が求めたからだ。このころのシチズンシップとは[市民性]、つまり市民としての資質を意味するようになっていた。以上の3つのシチズンシップ概念は、その時々に国家が求める市民像を受けて成立している。それとは別の流れとして、国家を超えた地域・組織の提唱するシチズンシップ概念が4つめに存在する。それが、1990年代以降にヨーロッパを中心に登場する「グローバル化に対応したシチズンシップ」だ。このシチズンシップも[市民性]を意味していた。

*1: EDCの正式名称は、Education for Democratic Citizenshipである。
*2: SOLの正式名称は、Social Outcomes of Learningである。
*3: 「ボランティア的シチズンシップ」と「政治的シチズンシップ」は、小玉重夫教授(お茶の水女子大学)の命名。

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