BERD 2005 No.3
【特集】
ケーススタディ
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滝 誠
犬山市教育委員会学校教育部指導課課長
たき まこと

犬山市教育委員会学校教育部指導課課長。
愛知教育大学附属名古屋中学校教頭、 犬山市立南部中学校校長などを経て2005年4月より現職。
BERD
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インタビュー 2
   犬山市の教育改革が見据えるものとは
滝 誠[犬山市教育委員会学校教育部指導課課長]

滝 誠
 「犬山の子どもは犬山で育てる」が発端だった。
 8年かけて進めてきた犬山市の教育改革は、「学校の自立」を軸に「学校現場の裁量」を生かしながら「子どもの学び」をより確かなものとする。
 その重要な柱に位置付けられた「学びの共同体」は、どう具体化されているのか。改革を支える滝誠先生にお話をうかがった。
Q
犬山市は、市を挙げて思い切った教育改革に取り組んでおられます。
その取り組みが始まったきっかけをお聞かせください。
 犬山市が本格的に教育改革に取り組むようになったのは、1997年ごろからです。国政レベルで聖域のない行政改革が、教育の分野にまで及んだことも背景になっていたと思います。犬山市の子どもは犬山で育て、その子どもたちが地元で活躍できるような町づくりをしようという考え方が、底流になっていました。
 この町づくりのヴィジョンを実現するには、教育の果たす役割が大事になります。犬山の子どもを育てるために犬山の教育を確立するという発想です。犬山市の教育改革は、この発想が出発点です。基本にあるのは学校現場が主体となって学びの学校づくりを進め、市はそれを全面的に支援するという姿勢であり、これが犬山の教育の哲学です。
Q

現実に改革を進めていこうとしたら、そのための体制を整える必要があります。
改革を断行するためにとられた大きな施策は何でしたか?

 犬山市教育委員会(市教委)のてこ入れです。まず教育長に市長が最も信頼の置ける人物を愛知県から、しかも犬山市外から教育長に招聘したのです。その上で市教委の事務局についても、年々スタッフの充実を図り、教育長のブレーンとして学校教育部長や指導課長、2名の指導主事に、小中学校校長や教頭、教務主任の経験者で、学校教育の現場を熟知する人間を持って来たのです。人口7万5千人ほどの犬山市のスケールから考えるとこれぐらいの人数は適正な配置なのですが、現実的にこれほど多くの人的配置は異例といえるのではないでしょうか。
 近隣の市町村では校長OBが教育長となるケースが多い中、あえて校長OBではない人物を教育長に起用したのは、言わば“異分子”を入れることで「外からの発想」に期待したからだと思います。
 学校現場と市教委の間の人事交流がスムーズに行われていることも、教育改革を推進する大きな要因となっています。犬山市には小学校は10校、中学校は4校ありますが、小学校10校のうち3校、中学校は4校すべての校長が市教委の事務局にいた人です。
 最近、「教育委員会廃止論」を唱える人もいます。この制度が空洞化しているというのですが、犬山市は教育委員会の役割は非常に大きいと考えています。これまで学校にはどうしても横並び的な傾向が見られ、ある意味で市教委がリーダーシップを発揮しないと教育改革が進まないという現状がありました。犬山市の教育改革は、教員の人事権を含めた市教委の体制づくりと、機動性が強化されたことと無関係ではないと考えています。
Q
それは市教委が強いリーダーシップを発揮して、
教育現場をリードしたということですか?
 学校の裁量を生かすとは言いながら、それを全面的に支援する市教委の支援体制が整備されていなければ、決して教育改革を進めることはできません。そして、市教委と学校の現場の双方が、改革のヴィジョンを共通に理解しておかないと実現できません。今は重要な教育施策を、市教委と校長会が話し合いながら決めています。
 犬山市の教育改革の基礎になっているのは、学校をつくるのは校長を中心とした教師の集団であるという認識です。あくまでも義務教育の範囲内ではありますが、それぞれの学校の実情に合わせて、学級編制や教育課程の編成などを学校の裁量でどんどんやってもらうのです。それを市教委が全面的に支援する。そういう体制を整えたということです。
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