BERD 2006 No.5
【特集】
インタビュー
BERD
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スキル重視の英語教育導入にはいくつもの課題がある
 小学校段階での英語教育において、「スキルを重視するべきか。コミュニケーションを重視するべきか」という政策的判断は、その時の教育環境や教育情勢によると思います。
 私は、スキルを重視したカリキュラムを小学校に導入することも、理論的には不可能ではないと考えています。特に次回の学習指導要領の改訂では、中学卒業時までに身に付けさせる「読む・書く・聞く・話す」の4技能の習得について、従来の方向目標的なものから、より具体的な数値を含む到達目標として示される可能性が高いと考えられます。しかし、今の中学校3年間の英語の授業時数の中で、具体的な達成目標に到達する指導を展開できるかというと、かなり厳しいといわざるを得ません。そこで小学校段階からスキル的な要素を英語教育の中に取り入れることによって、中学卒業時の英語力のレベルを底上げしていくという考え方もあります。
 しかし現実問題として、小学校においてスキル習得に重点を置いた英語教育を実現するためには、さまざまな条件をクリアすることが不可欠になります。まず週1時間程度の授業時数では、とてもスキルは身に付かず、少なくとも週2〜3時間は必要になります。そうなると国語をはじめとした他教科とのバランスが検討事項になります。さらに英語のスキルを教えられる小学校教員を養成していくための制度も整えなくてはいけません。つまり、抜本的なカリキュラムの見直しや教員養成システムの再編が必要になるわけで、そこに着手するのは簡単なことではないと思います。
 また、小学生に対してスキル習得を重視した英語教育を行った場合に、児童の英語力がどれくらい伸びるかといったデータの蓄積もほとんどありません。小学校英語をテーマにした研究開発学校が生まれてからすでに10年以上が経過しているのですから、国はこうしたデータを集めていてもおかしくないのですが、どういうわけか参考にすべき十分なデータがないのです。スキル習得を重視した英語教育を展開しようにも、発達段階に応じた指導法がまだ確立されていないというのが現状です。ですから現実的な選択肢としては、「スキルの重視よりも国際コミュニケーションに力点を置いた活動」ということになるのです。
松川禮子
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