BERD 2006 No.7
【特集】
インタビュー
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清水克彦
東京理科大学理学部教授
しみず かつひこ

東京理科大学理学部教授。
専攻は理数教育。
日本数学教育学会、日本科学教育学会会員。
筑波大学第2学群人間学類卒、同大学大学院教育学研究科数学教育学専攻博士課程単位取得退学。
国立教育研究所教材研究室長、東京理科大学助教授を経て現職。
共編著に『コンピュータで支援する生徒の活動〜数学科・図形分野での新しい展開〜』(明治図書出版)、監訳書に『グラフ電卓で探る数学の世界』
(現代数学社)などがある。
Refarence
『品川区小中一貫教育要領』
『品川区小中一貫教育要領』

 品川区教育委員会編著/講談社/2005年
 2003年に構造改革特区の小中一貫教育特区に特定された品川区は、2006年から全国で初めて小中一貫教育校を開校。その理念と今後の展望、教育課程編成基準、独自に設置した市民科を含め全教科の学習指導指針を収めたのが本書である。地域基準に則った教育という初の試みの内容を具体的に知ることができる。
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「学び」をスムーズに移行させるカリキュラム改革
──品川区小中一貫教育における算数・数学科の取り組み──
清水克彦[東京理科大学理学部教授]

清水克彦
 本来は同じ学問につながる教科なのに、小学校では「算数」と呼ばれ、中学校と高校では「数学」と呼ばれる。
 そのカリキュラムと指導法も、自ずと「6・3・3」制の区分に規定されている。
 しかし算数から数学への移行は果たしてスムーズに行われているのだろうか。
 2006年4月からスタートした品川区の小中一貫教育で、算数・数学科のカリキュラム作成に関わっている清水克彦先生に、9年間を見据えた新しいカリキュラムの考え方をうかがった。
Q
6・3・3制の学校制度とカリキュラムの関係を数学教育の専門の立場からどう見ていますか。
 戦後すぐに、当時のアメリカの学校制度の区分である6・3・3制が導入されました。日本の場合は全国一斉の学校制度ですから、以降ずっと最近まで、それを継続しているわけです。
 算数・数学教育でいえば、小学校の6年間は「算数科」を学び、中学校の3年間と高校の3年間は「数学科」を学びます。つまり、6・3・3の枠組みが教科の名前を規定し、そのまま教科の枠組みになっているのです。
 さらに、学習内容や指導法も「算数」「数学」という6・3・3制に依拠する教科の枠組みを前提に成立しています。すなわち、小学校の「算数」では具体的な数を中心に扱い、中学校の「数学」では抽象的な文字や代数式を使ったものを中心に教えるという枠組みです。40年ほど前に「数学教育の現代化」が叫ばれた際、小学校に文字や代数式が導入されたことがありますが、それは一時的な試みにすぎず、戦後一貫してこうした「算数」と「数学」の違いは続いてきました。日本の6・3・3制の場合、「6」と「3」で教科名が違うので、自然に扱う内容もそれに規定されているわけです。
 中学校では具体的な数ではなく、抽象的な文字や数式を扱いますが、では果たして、中学校に上がって抽象的な内容に何の苦労もなくついてこられる子どもがどれだけいるでしょうか。小学校の具体から中学校の抽象へという移行がスムーズに行われているかといえば、甚だ心もとない。
 教員免許制度で小学校は全科、中学校は専科となっていますから、小学校では全科の中の「算数」という位置付けですが、小学校5、6年生では専科の先生が中学校の「数学」を見据えて指導した方がよい内容もあります。例えば分数の加減乗除、図形の性質などがそうです。逆に中学校の内容であっても、必ずしも抽象的なことばかりでなく、小学校で扱う具体例を持ってきた方がよい場合もあるでしょう。
 6・3・3制の区分を当然のこととして疑いなく受け入れ、それに基づいてカリキュラムや指導法を組み立ててきたので、かえって義務教育としての9年間のまとまりが見えにくくなっている、ということはあると思います。
 世界的に見ると6・3・3制は今や大勢ではなく、例えばアメリカでは、4、5年生あたりからミドル・スクールという学校区分があるし、シニア・ハイスクールも10年生から始まるところもあれば8、9年生あたりから始まる学校もあり、その地域や方針に合った学制へと多様化しています。このように区分としてはフレキシブルになっていて、まとまりの見直しがあった結果だと考えられます。
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