BERD 2006 No.7
【連載】
若手研究者
現地調査レポート
第1回:中国江蘇省
カナダ
中国江蘇省 width=
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劉 雲龍
東京工業大学大学院修士課程1年
りゅう うんりゅう

中国上海市生まれ。
早稲田大学理工学部卒業。
東京工業大学大学院修士課程1年。
専門は教育工学。
Refarences
●「第1回子ども生活実態基本調査報告書〜小学生・中学生・高校生を対象に〜」VOL.33/ベネッセ教育研究開発センター、研究所報/2005年
●『生きるための知識と技能2〜OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2003年調査国際結果報告書〜』国立教育研究所編/ぎょうせい/2004年
●『特色ある学校づくり〜学校ブランドの創造〜』佐藤晴雄他/第一法規/2004年
BERD
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中国と日本の子どもたちに見る学習動機と取り組みの違い
第1回:中国江蘇省
劉 雲龍[東京工業大学大学院修士課程1年]
(りゅう うんりゅう)

劉 雲龍
   本誌では、若手の教育研究者の研究支援を目的とした新たな活動をスタートした。
 研究者自身の探求テーマをより深めるために、海外の現地視察・取材を行い、本誌にてレポートしてもらうというものだ。
● 調査概要
調査テーマ
1)中国(農村部)と日本(東京都)における「子どもが勉
  強する動機・目的及び学習への取り組み」の違いを
  明らかにすること
2)子どもの視点から見た「自分」と「自分の周り」の日
  中間の差異を明らかにすること

調査時期
中国(農村部)2006年9月7日〜9月18日  
日本(東京都)2006年10月1日〜10月15日

調査対象国及び対象者
中国(農村部)と日本(東京都)の公立中学校2、3年生

調査対象数
中国(農村部)212名、日本(東京都)105名

調査方法
アンケート調査。アンケートは「第1回子ども生活実態基本調査報告書〜小学生・中学生・高校生を対象に〜」(ベネッセ教育研究開発センター、研究所報、VOL.33、2005年8月)から抜粋し作成した。

アンケート回収率
中国(農村部)191名(うち2年生99名、3年生92名)、回収率90.1%
日本(東京都)94名(うち2年生63名、3年生31名)、回収率89.5%

調査協力校
1)東京都多摩地区の公立中学校
2)中国農村部にある全寮制公立中学校
はじめに
 筆者は1999年秋に上海市代表に選抜されて来日し、千葉県暁星国際高校で学んだ後、2002年に早稲田大学に入学した。現在、東京工業大学大学院社会理工学研究科人間行動システム専攻の赤堀研究室に所属し、子どもの「学力」と「教育」の国際比較というテーマで研究を進めている。
 2年前、経済産業省から早稲田大学へある調査の委託があった際、筆者はその一部を担当し、「競争力のある人材育成」というテーマの下、日中両国の教育・企業関係者と産学連携、大学の教育システムなどについて熱く議論を交わし、教育に対する思い入れを強くした。また社会問題としての観点から、教育普及問題(希望工程等*1)に対する中国政府の対応及び民間の動きについても以前から注目してきた。恵まれた環境の中で教育を受けることのできた一中国人として、このこととどう関わるか真剣に考えなければならない。良い国をつくるには良い教育方法と教育体制が必要不可欠である。たとえ自分自身が世界一のものをつくれなくても、世界一のものをつくることができる人材を育てられるのだとしたら、これに代わるやりがいはない、と筆者は考える。日中両国の経済関係は日に日に緊密の度を増しているが、経済面だけでなく教育面においても両国が協力できるところはないだろうか、ということも常に考えている。
 今回、研究の一環として、BERDの特派員となり中国での調査を実行することができた。以下では、調査の具体的な内容について報告させていただくが、教育に携わる研究者または現場の先生方に少しでも参考になることを願う次第である。
  • *1 希望工程は中国国内外の民間資金を集めることで、未だに法律で定められた9年義務教育を受けられない中国貧困地域の子どもを援助するための公益事業である。近年、貧困地域における教員研修及び教育施設の建設、教育環境の改善にも全力を挙げている。この事業は89年、中国青少年発展基金会により創設された。

本比較調査を実施する社会的背景及び目的

 近年、日本の子どもの学力低下問題についてさまざまな議論がなされ、これからの時代にふさわしい教育システム及び教育方法の開発が期待されている。しかし、それは子どもたちを取り巻く社会状況や教育環境が常に変化していることを意識しながら、日本と世界の教育の現状を把握した上で提案されなければ、単なる理想論で終わってしまいかねない。
 本調査研究では、「第1回子ども生活実態基本調査報告書〜小学生・中学生・高校生を対象に〜」(ベネッセ教育研究開発センター、研究所報、VOL.33、2005年8月/以下「子ども生活実態基本調査報告書」)を基に、子どもの視点から見た「自分」と「自分の周り」、勉強に対する姿勢や目的などについて、近年目覚ましい教育成果を上げている中国(農村部)と日本(東京都)の公立中学校を比較分析することで日本の教育の現状把握を試みた。また、アンケートの結果に基づいて、日本の教育の強みや弱みを明らかにしていきたい。
 ただ本調査研究は一事例研究にすぎない、ということも十分に理解していただきたい。なぜなら、社会的及び歴史的背景、文化や思想の違いなどが国の教育体制や教育方法に大きな影響を与えているからである。また、本調査に協力していただいた学校間の差も、少なからず何らかの形で結果に影響を及ぼしていることは否定できない。
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