BERD 2008 No.15
【特集】
インタビュー
BERD
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個人的な省察にとどまらず相互に良い点を評価し補い合う
秋田喜代美 自己評価は個人的な省察にとどまりません。保育者同士の相互評価を起点とした自己評価論を導入すべきです。相互の信頼の下で、互いに他者の良い点を認め合って、自分の足りない点を補っていく。すると元気が出てくるし自分の課題も落ち着いて考えられる。個々の保育の実践と、組織としての園の在り方を、そのような形で相互に自己評価しながら、焦点を絞って課題を解決する。それが保育者の資質向上、園の組織運営の改善につながる可能性が高いと思うのです。
 大江健三郎氏が、作家の仕事は言葉を「磨く」ことだと述べています。毎年同じ教材を同じ学年に教える教育の仕事もまた、「磨き」─エラボレーションではないでしょうか。保育も似たところがあります。そこで「エラボレーション、オーケストレーション、コラボレーション」が保育者の資質向上には必要、とあるところで書いたら、シンポジウムでご一緒した同僚の佐藤学先生に「その順番が肝心だね」と補足いただきました。
 つまり、まず自分を磨き(エラボレーション)、お互いに響き合い(オーケストレーション)、そして連携しつつ(コラボレーション)資質向上を目指そう、という発想ではうまくいかない、と。それは高度な「職人モデル」であり、普通の人にとっては、自己省察によって自分を磨き資質を高めた上で、それを互いに見せ合いながら集団としての資質を高めるなどというプロセスは困難をともない、息苦しくてとてもついていけない。それだと、最も優秀な人にみんなで追いつけという話になってしまう。その通りだと思いました。
 そうではなく、まず「みんな楽しみながら熱心にやってるなあ」という雰囲気の中で響き合い、互いに信頼を寄せて連携する中から、相互に補いながら自分を磨いていく。意欲のある職場であればやる気も出ます。そのほうが保育の楽しさを実感でき、自信をもって取り組めるようになる。うまくいっている組織とはたいてい、こうした「同僚性」が高いものです。幼児は園庭を自由に行き来し、もともと保育者はチームで動くので、クラス単位で個別に授業をする小学校以降よりも、こうした発想を取り入れやすいのではないかと考えられます。
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