ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
データでみる 子ども・学校・家庭
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「生徒」・「保護者」の意識を学校はどうとらえ、指導していけばよいか
ベネッセでは、子どもの学習環境を総合的に把握するために、子ども、教師、保護者の意識や実態を調査しています。今回はそれらの調査結果から、生徒と保護者の学習に対する意識と実態に焦点をあて、学校として検討していくべき課題を探ります。
(1)学習の意味を見いだせない中学生
  (第3回学習基本調査<中学生版>より)※注1
 平日の家庭学習時間が減少傾向にある今の中学生に学習上の悩みをきいたところ、勉強を負担に感じ、今の勉強が何に役立つのか意味を見いだせない中学生が増えていた。約10年前の調査結果に比べ、「どうしてこんなことを勉強しなければいけないのかと思う」(10.6ポイント増)、「世の中に出てから、もっと役に立ちそうな勉強がしたい」(6.9ポイント増)と思う中学生が多くなっていて、今している勉強が将来にどうつながるのかという「勉強の意味」を見いだしにくくなっている(図1)。

注1 第3回学習基本調査:小・中・高校生の学習に関する意識・実態調査。
調査方法/学校通しによる質問紙調査。
調査時期と対象/2001年5〜6月(第1回は1990年、第2回は1996年)。
全国の小5生2,402人、中2生2,503人、高2生3,808人。
(2)保護者の子どもへの関与が高まる
   (第2回子育て生活基本調査<保護者調査>より)※注2
 1998年と2002年の保護者のデータを比較すると、「子どもの教育・進学面では世間一般の流れに乗り遅れないようにしている」が50.5%→59.3%と増加したり、「習い事や塾に通わせないと不安」が44.2%→50.9%と増加するなど、教育に対する不安が高まっている。そして、「子どもがすることを親が決めたり、手伝ったりすることがある」が36.3%→41.1%と増加しており、保護者の関与が高まっている。
 また、「将来ふつうの生活に困らないくらいの学力があればいい」が減少し、ほどほどの学力では満足しない保護者のこだわりがみえる(図2)。

注2 第2回子育て生活基本調査:小1生〜中3生の子どもがいる家庭での
子育て生活の実態やしつけ、教育に関する保護者の意識調査。
調査方法/学校通しによる質問紙調査。
調査時期と対象/2002年9月(第1回は1998年12月)。
首都圏の小1生から中3生の子どもをもつ保護者6,085人。
(3)個に応じた指導を心がける教師
   (第3回学習指導基本調査<教師調査>より)※注3
 「習熟度別指導」をいずれかの学年または教科で実施する中学校は5割を超えており、生徒の習熟の度合いに応じた指導が浸透してきている。また、新学習指導要領を受けて、授業を進める際に「生徒の発言や発表の時間」や「机間指導や生徒に個別に対応する時間」を多くするなど、生徒の主体性を重視し、個に応じたきめ細かい指導を意識的に実践している(図3)。生徒への評価活動は、「絶対評価」が中心になったことで複雑になったものの、生徒のようすを細かく観察したり、教師自身の指導方法を振り返ったりすることができるようになったととらえている。

注3 第3回学習指導基本調査:小・中学校における学習指導についての教師の意識と実態調査。
調査方法/学校通しによる質問紙調査。
調査時期と対象/2002年9〜10月(第1回は1997年、第2回は1998年)。
全国14都道府県の小・中学校の管理職1,245人、教諭7,007人。
(4)今後の課題
 学校現場は新学習指導要領への不安を抱えながらも、学習意欲を向上させるためにさまざまなチャレンジをしています。一方、家庭では教育への不安からか保護者の生徒への関与が高まるなど、かえって生徒の主体的な学習活動が減っているともいえます。生徒を学習に向かわせるためには、生徒への指導だけでなく、保護者ともコミュニケーションをとり、保護者と連携して生徒の学習環境を整えていくことが必要なのではないでしょうか。
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