ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
総合的学習を軸に徹底した指導。目標や意味を示して、失敗を恐れずやらせてみる

千葉県八代市立 勝田台中学校
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最初にハッキリ目標と評価を示す
 勝田台中学校の総合的学習では、学習の意味、目標、そして、どのような評価をするかまで、オリエンテーションで徹底的に話す。
 例えば、今三年生で進行中の「古人との出逢い」では、「調べただけでは出逢ったことにならない。『私は確かにこのように古人と出逢った』と言えること、つまり『学習の前と後とで考えがこう変わった』と価値観の変容にまで言及できるように」と目標を示していく。
 最も重要なテーマ設定では、生徒が書いた「課題づくりシート」(図1)をもとに一対一のカンファレンスに時間をかけ、追究プランを構築させる。追究活動に入ったら、ポートフォーリオ、とりわけ「自己評価カード」(図2)を毎回チェックし、つまずいている子にはアドバイスをする。そのためにも、総合的学習を指導する学年の教師集団は、週一回必ず会合を持つ。
「やらせて、認めて、伸ばす」「失敗があっても再挑戦させる」ことで、生徒たちは着実に力をつけてきた。
▲図1 課題づくりシート。これをもとに先生と生徒が1対1で面談をする

▲図2 自己評価カード。これを継続的に見ていくことで、生徒の意欲やつまずきが見て取れる

▲図3 お助け・HELPカード。行き詰まったら、このカードに書いて、先生にアドバイスを頼むことができる

綿密な計画から「自由」を生み出した修学旅行
 六月初めに行われた三年生の修学旅行(総合的学習の一環)は、「現地集合」というあまり聞いたことがない方式で行われた。午後五時十五分までに長野県の松本駅にたどり着ければ、経路・交通手段、もちろん途中下車も自由というものだ。だから、切符も各グループで手配する。二人以上ならどんなグループでもいい。結局、二十グループ、二十種類のプランができた。新宿から特急あずさで松本に直行して周辺を回るグループもあれば、小海線を使った清里経由のグループ、軽井沢まで長野新幹線で行き、しなの鉄道で松本入りするグループ等々。
「最近の子どもたちはよく親に旅行に連れて行ってもらいますが、内容をほとんど記憶していない。自分でプランを立てないからです。旅というのは大げさに言えば、人生観を変えかねないような出会いがあるものなのです。独自のプランをつくり、困ったことがあっても、それを自力で解決していく。そうした旅を生徒たちに体験してほしかった」と、計画の推進役、三学年主任の嶺岸秀一先生は話す。
 こうした異色のプランには、当然、保護者から反対の声も挙がった。心配する先生方もいた。それらを説得するためにも、生徒たちには三か月かけてプランを練らせた。計画があやふやだったり、「おもしろくない」と判断すれば、何度もやり直させた。同時に学年の先生たちは、下見は当然のこと、引率の配置、チェックポイントの設定、非常時の想定など、綿密に計画を練った。その結果、教育委員会に提出した届け出文書は十五ページにも及んだ。
学年主任の強いリーダーシップ
 こうしたユニークな修学旅行ができた背景には、二年間に及ぶ総合的学習を軸にした徹底的な指導があり、その結果、生徒と先生の間に強い信頼関係が育ってきたことがある。
 そのリーダーシップをとったのが学年主任だ。嶺岸先生は入学式の日、生徒・保護者を前にして、三年かけてこんな教育をするとビジョンを示した。
 まず、生徒に徹底的に基本的な生活習慣を身につけさせた。あいさつはむろん、服装をきちんとする、人の話はちゃんと聴くなど。その厳しさに泣き出す生徒もいたという。しかし、生徒に基本的生活習慣が身についていくごとに、人間性豊かな思いやりのある生徒が育ってきた。
 同校の加賀谷孝校長は、「学校の勢いは学年主任の熱い思いで決まる」の信条のもと、学年独自の活動を自由に行うことを認めている。学年主任もそれを意気に感じて、思い切った活動で応えてきた。さらには、学年のなかだけでなく、総合的学習を通じて、学校全体を巻き込んだ活動を推進してきた。
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 見学した総合的学習の授業では、「どうして、このテーマを選んだの?」とどの生徒にきいてもしっかりした答えが返ってくる。あいさつのしかたなど、きちんとした大人としての振る舞いも気持ちよい。
 こうした雰囲気も、教師が一体となって、生徒の見えないところで生徒を支えてきた成果だろう。
▲「なぜそのテーマを選んだの?」声をかけると、どの生徒も実にしっかりとその理由を語ってくれた。パソコンで検索したり、書籍を調べたり。目的意識を持っている生徒たちは、2時間を自由にのびのびと使っている

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