ベネッセ教育総合研究所
特集 中学校のキャリア教育を考える
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出口指導に陥ってしまった進路教育
キャリア教育によって原点に立ち戻る
仙崎 ところで最近文部科学省は、にわかにキャリア教育について言い出しています。『ハローワーク』のスタンスは、キャリア教育の考えに通じる部分があると思うのですが、どうお考えになっていますか。
村上 文部科学省が言い出している「キャリア教育」というのは、具体的にどういうことですか。
仙崎「報告書」(注)では、端的に「児童・生徒一人ひとりの勤労観・職業観を育てる教育」と定義しています。
注 正式には「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」。以下、「報告書」。

 つまり、子どもの職業理解を深めるとともに、進路選択力を育てようということです。そのためには、小学校1年生から学校教育の中心的な指導として、進路や職業について理解させ、将来の生き方や仕事の選択能力を育てようというねらいが込められています。
村上 基本的には間違っていないですよね。ただ、社会の変化の速さに比べてその考えは遅すぎたという感じです。
仙崎 教育現場でいつもきかれるのは「進路指導とキャリア教育はどう違うんですか」ということです。私は「二つは本質的には同じで、職業的な自立や、社会人としての資質を養うといった目標を達成するための指導が、進路指導でありキャリア教育だ」と答えています。しかし、進路指導はいつの間にか理念や目標がすっ飛んで、多くの中学校でどこの高校を受験・合格させるかといった出口指導になった。だから子どもは小学校から高校まで1万2千時間も学校で過ごしているのに、「将来の生き方や自分に向いた仕事がわからない」と言うんです。そこで、もう一度本来の教育の原点に立ち戻るために、「キャリア教育」という新しい概念が打ち出されたということです。
 しかもキャリア教育は、中学校だけでは完結しない。中学生の97%は高等学校に行くわけですから、小・中・高一貫してキャリア教育を実施してくださいということです。
村上 教育というのは、子どもが大人になったときに社会的・経済的に生きていけるためにある。そのためには基礎的な学力とスキル、コミュニケーション能力と人間としてのモラルが必要になります。それを子どもたちにトレーニングさせるということですから、考えてみれば、キャリア教育というのは当たり前のことですよね。
 ただ当たり前のことなんだけれど、これまではいい学校、いい会社をめざすという単純なレールに沿い、学校や先生が中心になって指導していればよかった。でもいまはそれがなくなったから、混乱が起きているということでしょうね。
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