ベネッセ教育総合研究所
関  靖直氏にきく
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キャリア教育推進事業を実施。
その成果を各校の参考にしてもらう
─協力者会議の報告書を受けて、文部科学省ではキャリア教育を今後どのように推進していく計画なのでしょうか。
 まずはキャリア教育のねらいや、具体的な指導内容を、学校の先生方に理解していただく必要があります。そこで先生向けに、「指導の手引き」(注1)、「事例集」(注2)を作成しようと考えています。
注1 キャリア教育を具体的に学校現場で推進していくための手引書。小・中・高各段階でのカリキュラム例や、授業のなかでの指導例などが掲載される。完成は2004年度中の予定。
注2 キャリア教育にすでに取り組んでいる学校の具体的事例を紹介していく。国立教育政策研究所生徒指導研究センターが取り組んでいる。完成は04年度中。


 もう一つは、今年度から3年間「新キャリア教育プラン推進事業」のもと、各都道府県でキャリア教育プラン推進地域を1か所ずつ指定し、指定地域内の学校にキャリア教育のプログラム開発に取り組んでもらう計画です。指定地域内の小・中・高校が、キャリア教育という視点から教科教育、特別活動、道徳、「総合的な学習の時間」など教育課程のあり方を見直し、実践した成果を、各校の参考にしてもらおうと考えているわけです。

─推進地域の規模はどの程度ですか。
 市町村単位の場合もあるでしょうし、さらにもう少し広いエリアになることもあるでしょう。そこは各都道府県の教育委員会に考えてもらえればと思っています。
 地域での指定というかたちをとったのは、キャリア教育が学校内の活動だけで完結するものではないからです。職場体験学習や社会人講演会では、地域との連携が不可欠です。また発達段階に応じたキャリア教育を実践するには、小と中、中と高が連携を密にする必要があります。推進事業では、同時に、そうした地域のシステムづくりにも取り組む計画です。もちろん地域のシステムづくりは学校だけでは大変ですから、そこは教育委員会が主導する役割を担うことになるでしょうね。

─キャリア教育を根づかせるためには、各学校で中核となって活動できる先生を増やすことが不可欠です。文部科学省では、人材養成のプランをどのように描いていますか。
 現在も各教育委員会が進路指導主事などを対象とした研修・講座を実施していますが、このなかにキャリア教育の考え方や、キャリア教育の視点に立ったカリキュラム開発の方法についての内容を取り込んでいく予定です。
 もう一つは、児童・生徒一人ひとりの生き方や進路選択の相談、支援をする「キャリアカウンセリング」を担当できる教員を養成することです。報告書にもキャリアカウンセリングについての研修プログラム例を示していますが、これをもとに自治体や教育委員会で研修プログラムの内容について検討してもらい、キャリアカウンセラー養成のための研修を実施していただきたいと考えています。

─中学校ではせっかくキャリア教育を充実させても、高校受験の段階では、学力によって学校選択をせざるを得ないという現実があります。このギャップをどう考えますか。
 高校入試とキャリア教育は相反するものではないと思います。高校に入学するための学力を身につけるのは大切なことですが、学力だけで学校選択をすることが問題なのです。子どもが学ぶ意義・内容をよく考えたうえで学校選択をするようになるためにも、キャリア教育は必要です。
 つまり、キャリア教育は、卒業後にどこの高校に進むかを決定するためだけの指導ではありません。キャリア教育のいちばんの目的は、子どもが自分自身のなかで、自己と働くこととの関係をつくり上げ、自立した社会人として生きていくための能力を身につけることです。 ─今後、キャリア教育を推進するうえで、学校現場や教育委員会に望むことは何ですか。
 まず、教育委員会にしてほしいことは、出口指導のみにならないための研修の実践と、行政としての地域のシステムづくりです。そして、学校現場に望むのは次の点です。
(1) キャリア教育を学校全体の実践としてと らえてほしい。
(2) 発達段階ごとの課題に応じた系統的なキ ャリア教育を実践してほしい。
(3) 体験活動等を推進するために、保護者・ 地域との連携を図ってほしい。
 また、これらの実践を具現化するためには、なんといっても、管理職の先生方に意識を高めていただくのが重要だと思います。

─本日はありがとうございました。


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