ベネッセ教育総合研究所
特集 小・中の壁を超える中1・1学期の指導 とは?
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小・中の格差がこれまで以上に広がっている?
 中1になると急に学校不適応や問題行動、あるいは学業不振に陥ってしまう理由は、いくつか考えられる。
 一つには、小学校と中学校との指導スタイルの差が広がっていることだ。近年、小学校では低学年を中心に少人数学級が増え、個に応じた丁寧な指導に力を注いでいる。調べ学習や体験を重視した授業も増えてきた。一方、中学校は、個に応じた指導は増えてきているものの、高校入試という高いハードルが待っているため、依然として一斉授業による知識・理解中心の授業が多いのが実情だ。
 二つめとして、子ども自身の変化が考えられる。「基本的な生活習慣やマナー、ルールが身につかないまま中学校に入学してくる子どもが増加している」と指摘する声は多い。中学生として最低限身につけさせたい生活習慣やルールと、現実の子どもの姿との差が大きくなっている。
 また、中学校では小学校以上に家庭学習が必要となるが、小学生の家庭学習時間は減少傾向で、高学年でも家庭学習習慣が身についているとはいえない(図3)。
図3 家庭で2時間以上学習をしていると答えた割合(小5)
図表
ベネッセ未来教育センター「第3回学習基本調査」(2002)より
 さらに最近の子どもは、人間関係づくりが苦手になっているといわれている。相手を傷つけることを平気で言う一方で、逆にちょっとしたことに傷ついて、人間関係をうまくつくれない。そうした子どもには、より丁寧な個別指導が求められるのだが、中学校は教科担任制となるため、小学校と比べて教師と子どもの距離が広がってしまい、子どもの内面まで掘り下げたきめ細かな指導が難しい面がある。
組織的な、丁寧な指導が求められている
 こうした多くの課題のなかで、子どもたちを小6から中1へスムーズに移行させるために、中学校入学直後の指導(初期指導)の重要性が高まってきているが、その方策はさまざまだ。
 子どもたちに小学校と中学校の壁を超えさせるには、小・中間の情報共有やカリキュラム面での連携が不可欠だ。そして、早い段階で学習習慣や生活習慣を身につけさせることが、中学校生活を順調にスタートさせる前提となっている。
 そのためには、組織的な指導体制のもと、一人ひとりに対して、これまで以上に丁寧な指導が求められる。

 そうした初期指導を、具体的にはどのように進めていけばいいのか、現場の先生の声や事例をもとに検討していく。


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