ベネッセ教育総合研究所
特集 小・中の壁を超える中1・1学期の指導 とは?
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宿泊オリエンテーションを入学式の2週間後に実施
 初期指導のなかで、もっとも大きなイベントが、入学式の2週間後、4月20日ごろに山梨県・八ヶ岳で行われる2泊3日の新入生宿泊オリエンテーション(自然体験学習教室)だ(写真1)。
写真
▲写真1 宿泊オリエンテーションでの学習会。
1年生全員が食堂に集まって行われる。
学年単位での指導が同校のスタイルだ
 その特徴は、ほうとう(山梨の名産)作りや自然観察などの体験学習、クラス対抗の校歌コンクールのほかに、各教科の学習会など、学習習慣や生活習慣の確立を目的としたメニューが組まれていることだ。
「八ヶ岳には府中市の持つ宿泊施設があるため、市内の中学校はどこもそこを使って自然体験学習をしていますが、1年生4月に宿泊オリエンテーションをするのは三中くらいでしょう。しかも宿泊先で学習会までするのは、かなり珍しいと思います。生徒には『このオリエンテーションを通じて、真の三中生になるんだよ』と話しています」(渋谷校長)
 具体的には、外部の人と接するときのあいさつや礼儀の大切さ、集団行動や時間を守ること、さらには掃除の仕方まで、徹底的に指導する。学習会では、各教科の勉強法についての説明を受けたあと、静かに黙って課題に取り組むことを求められる(図2)。
図表
▲図2 宿泊オリエンテーション用パンフレットとプログラムの一部。
詳細な日程のほか、ふとんのたたみ方、掃除の仕方まで書かれている
「レクリエーション的な要素はゼロ」(高橋先生)というこの行事を通じて、生徒は基本的な生活習慣や自己管理能力、学習習慣など、中学校生活で必要とされるものを身につけることになるわけだ。
「宿泊オリエンテーションの前と後では、生徒のようすは見違えるように変わります。入学当初は、授業を受けるということに対する考え方、心の準備が不十分な生徒も見られます。しかしオリエンテーション後は、どの生徒も授業を集中して聞けるようになります」(渋谷校長)
 もちろん宿泊オリエンテーションの後も、学習面と生活面の両輪での指導は続けられる。新入生説明会のときに生徒に配った「学習マラソン記録表」には入学後も引き続き記録し、1年生は年間700時間、2年生1000時間、3年生は1200時間の家庭学習をこなすことが目標として設定されている。年間700時間といえば1日平均2時間と、かなりハードルが高いが、約半数の生徒が目標をクリアするという。また、毎日の朝会のときに生徒に記録表を提出させ、担任が目を通して個別にフォローをしていることも、生徒のやる気を高める効果を発揮している。「できた」という達成感が、「さらに頑張りたい」という意欲を引き出すようだ。
 一方、生活面での指導は、日々の細かい手立ての連続だ。高橋先生は言う。
「いまの生徒は人間関係づくりが下手で、ちょっと不愉快なことがあると、すぐに相手に暴言を吐いたりします。それがいじめやトラブルの原因になる。そこで生徒が乱暴な言葉遣いをしたときには、徹底的に注意・指導しています。スタート時期は荒れやいじめの芽を摘んで、強い指導をしてでも落ち着いた状態をつくり出す。そこで初めて生徒は余裕ができて、自分と同じように悩みを持ち、頑張ろうとしている仲間の存在に気づくのです」


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