ベネッセ教育総合研究所
特集 小・中の壁を超える中1・1学期の指導 とは?
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小・中がスクラムを組んで子どもを育てる
 実は不登校の問題は、赤池中学校ばかりでなく、赤池町教育委員会も深刻にとらえていた。教育委員会では、02年度からの2年間、国立教育政策研究所の研究指定を受けて、「生徒指導総合連携推進事業」(図2)を展開することにした。
▼図2 赤池町生徒指導総合連携ネットワーク推進体制図。
学校だけでなく、地域をあげた組織となっている
図表
 赤池町内にある二つの小学校と赤池中学校が連携し、さらには地域も巻き込んで、一緒に子どもを育てていこうという取り組みだ。
 鍋藤校長はこの事業の成果として、「地域で赤池の子どもを見守っていこうという意識が生まれたことは大きいが、なにより前進したのは、中学校と小学校がお互いに連携していく態勢がとれたことだ」と語る。
 推進事業では、「授業部会」「地域交流部会」「教育相談部会」の三つの部会が設置された。このうち、「児童・生徒の心をサポートする効果的な教育相談システムのあり方」を研究したのは、教育相談部会だ。この教育相談部会は、推進事業が終わった04年度以降も、教育相談システム推進委員会という名称で継続している。
 教育相談部会では、まず子どもたちに「学校生活について」と「心の健康について」のアンケートを実施し、その実態をつかんだ。さらには中学校と小学校の校長、教頭、各学年の教育相談係、補導、養護の先生方が定期的に集まって、不登校や不登校傾向、気になる子どもについての情報交換を行う「教育相談委員会」を設けた。 「不登校や不登校傾向にある子どものサポートは、小学校ならクラス担任や養護の先生などから構成される校内サポートチームの手に担われています。無届け欠席をした子どもがいたら、すぐに電話連絡や家庭訪問をするなどして、できる限り早い段階で子どもの状態を把握し、対策を練ります(図3)。
▼図3 校内サポートのイメージ図。
不登校、あるいは不登校傾向の生徒の担任と教育相談担当で
チームを組んで、生徒の支援や家庭訪問をする
図表
 それと同時に、2か月に一度開かれる教育相談委員会で、小・中学校の担当者の情報交換も行うのです。さらに深刻なケースでは、ケースワーカーや民生児童委員などの専門家も含めて、対策を講じます」(鍋藤校長)
 定期的に小・中学校で情報交換するようになって以来、生徒へのより細かな指導が可能になったという。例えば小学校ですでに学校生活への不適応を起こしている児童がいる場合、そのようすを小学校の先生から詳しく聞くことで、その児童が中学校に上がってきたときにどのような手立てを講ずればよいかが明らかになるというわけだ。
「実は今年度の中1生も、小学校時代に人間関係上のトラブルがあったという情報を、事前に小学校の先生方から聞いていたんです。そこで中1の初期段階での集団づくりが学年運営の成否を握ると考え、班活動や合唱活動などのグループ活動を行い、生徒同士がお互いの理解を深められるように、かなりの力を注ぎました」(柴田先生)


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