ベネッセ教育総合研究所
特集 学びに向かう集団づくり
PAGE 16/25 前ページ次ページ



柔軟なグループ編成が生徒の居場所の選択肢を増やす
 教科センター方式を採用し、多様で柔軟な集団を編成したねらいは、生徒の社会性を伸ばしていくことにあると、市島誠一校長は説明する。
  「従来型の学級主体の集団では、そのなかで人間関係が悪化したときに、生徒に逃げ場がなくなるのが大きな弱点でした。それとは対照的に、教科センター方式では、学級やHBなど多様なグループがあるので、生徒にとって自分の居場所の選択肢が非常に豊富になるのが、最大のメリットと言えます」
  実際、生徒たちは休み時間になると、学級やHB、同じ授業で知り合った友だち、さらに先輩や後輩などとも任意にグループを形成し、教科教室やHB、また教科教室付近に設けられた教科ラウンジなど実にさまざまな場所でそれぞれの時間を過ごしている。
  教科センター方式について生徒たちに感想を聞くと、「多くの人と知り合える」「小学校に比べ、先輩や後輩が身近」「授業によって顔ぶれが違うのが新鮮」といった人間関係に関するプラス評価の意見が目立った。
  また、聖籠中学校の教科センター方式では、生徒が多くの教師とのかかわりをもつことができるという利点がある。まず、学級とHBには、それぞれ別の担任がおり、生徒は自分が相談しやすい教師を選ぶことができる。さらに、5教科は、単元によっては、習熟度や課題で分けられるグループも異なるため、自ずと教わる教師も変わってくる。その結果、生徒はより多くの教師の授業を体験することができ、それは選択教科を選ぶ際の判断基準の幅を広げることにもなる。
  さらにもう一つ、教科センター方式の大きなメリットとしては、教科ごとに教材の準備を充実させられる点も挙げることができる。聖籠中学校では、それぞれの教科のエリアには、教室に加えて教科職員室と教科ラウンジが設けられている。それらのスペースには、教科担当の工夫によるさまざまな展示物が貼られ、関連する書籍や資料もそろえられている。さらに、その横には、グループで使用できるテーブルや、パソコンも配置されている。そのため、生徒は図書室に行かずとも、ここで調べ学習が行えるわけだ。こうした環境が生徒に及ぼす好影響を、研究主任の松原大介先生は次のように説明する。
  「展示物は、ほぼ全員の生徒が目を通しますから、頻繁に貼り替えたり、生徒の作品を掲示すれば、それだけ学習意欲の向上にもつながっていきます。さらに教科ごとの教室やラウンジは全学年共通で使用するため、異学年間の交流も大きな刺激となっています」


PAGE 16/25 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse