特集 「考える力」を引き出す授業―理数教科からのアプローチ―

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「直観力」を育てるさまざまな仕掛け

 こうした授業を通し、神谷先生が重視しているのが、「直観力(ひらめき)」を育てることだ。
 「数学では論理的な思考が大事ですが、それ以上に直観力を身につけさせることが重要だと思っています。例えば、ある問題を解くにあたり、どのような切り口で解こうかと着目する力が『直観力』であり、その後、問題を答えに導いていく思考が『論理力』であると考えています」
 この直観力を発揮する前提として、神谷先生は「いろいろな視野、視点で物事を見ることができる」ようにする必要があると考え、指導のなかにも、(1)その立場に自分を置いてみる、(2)必要な情報を集める、(3)実際に体験する、の三つの要素を盛り込むようにしている。先の授業の過程に置き換えれば、生徒が初めて目にするさおばかりを提示し、どのような結果が出るかを予測させ、一人ひとりの気づきを全員で共有する活動を経て、実験で確かめるといった一連の作業が、直観力を養うことにつながる。
 さらに、自信のないつぶやきとして表れる生徒のひらめき(直観)を認めることも重視している。それをクラスの意見に増幅させて発表することを繰り返すなかで、生徒は自分のひらめきに自信を持ち、明確な意見として意識するようになっていく。
 「新しい単元でも、既習の内容をもとに、まずは考えさせ、自分なりの見通しを持たせることで、直観力が養われると思います。仮にそれが間違っていた場合でも、その方法ではダメだということが『わかる』わけです。また、自分一人のひらめきだけではなく、他人のひらめきにも耳を傾けることで、視野を広げてあげることが大事です。単純に教え込むだけの授業とは、理解の深さが違います」
 教師は授業のマネジメントをするだけで、主役はあくまでも生徒だと神谷先生は強調する。


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