特集 「考える力」を引き出す授業―理数教科からのアプローチ―

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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さまざまな教科で「わかる」力を鍛える

 人間には生まれつき、頭で考える働きが備わっています。パズル問題を与えれば、小さな子どもでさえ、やり方を教わらなくても、自分でルールを発見したり、空間関係を把握しながら、問題を解こうとします。
 しかし、生まれつき備わっているとはいえ、こうした頭の働きは鍛えなければ伸びません。学校も頭の働きを鍛える場所の一つです。子どもは学校で単に知識を吸収するのではなくて、さまざまな課題に取り組みながら、「わかった」に達するための頭の働かせ方を身につけていくのです。「比較したり分類したりする力は、理数系の教科のほうが身につけやすいのではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。国語や社会、あるいは学校行事のなかでも、子どもはそうした力を身につけていきます。もちろん、学校以外でも、友だちとの遊びや、家庭での生活を通じて、子どもは頭の働きを鍛えていきます。
 頭を働かせる機会や場面が多ければ多いほど、何かの課題に直面したときに、自分で解き方を探り当てて、「わかった」にたどり着く能力は強くなります。
 脳の成長は、思春期ぐらいまでは続きます。22〜23歳ぐらいまでの人の脳は大変柔軟で、大人だったら思いつかないような頭の働かせ方をして、豊かな発想を展開します。数学や物理学といった斬新な発想力を必要とする学問分野で新しい発見をするのは、ほとんどが20代の若い学者です。
 もちろん、脳梗塞などで脳に障害を持った人がリハビリによってある程度機能を回復できるように、年をとってからでも頭の働きを鍛えていくことは可能です。でもその成長力は、20代前半までとはまるで違います。学校教育を受けている子ども時代に、いかに頭を働かせる体験を数多く持てるかが、鍵を握るといってよいでしょう。


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