いま、文部科学省が伝えたいこと 文部科学省初等中等教育局視学官 井上示恩氏にきく

井上示恩

▲文部科学省
初等中等教育局視学官

井上示恩

いのうえしめおん◎1990年文部省(当時)入省。文化庁文化部芸術文化課長補佐、内閣府地方分権改革推進会議事務局参事官補佐などを経て、04年7月より現職。

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いま、文部科学省が伝えたいこと

理数好きの子どもたちのすそ野を広げていくために

文部科学省
初等中等教育局視学官
井上示恩氏にきく

近年、子どもたちの理数離れを懸念する声が高まっている。文部科学省ではこの問題をどうとらえ、どのような施策を講じているのだろうか。初等中等教育局視学官の井上示恩氏にお話をうかがった。

日本の子どもたちの「知離れ」の進行が国際調査で明らかに

――2003年にOECD(経済協力開発機構)が行ったPISA(生徒の学習到達度調査)(注1)では、日本の子どもたちの数学的リテラシーの低下が指摘されました。またIEA(国際教育到達度評価学会)の03年の調査(TIMSS)(注2)でも、成績に下降傾向が見られました。この結果を文部科学省はどうとらえていますか。

井上 算数・数学のリテラシーに関しては、数量や図形の基本的な意味についての理解力に課題があります。同時に、数学の問題を読んだときに、何を問われているのか理解できず、うまく答えられない児童・生徒が目立ちました。また、科学的なリテラシーも、論述形式の設問や、日常生活と関連の深い設問に答えられない児童・生徒が少なくありませんでした。
 算数・数学、理科で身につけた知識が、日常生活と結びつかず、実生活で応用していく力が弱くなったと感じています。
 ただそれ以上に私たちが危機意識を感じているのは、意識の面で「勉強をしたくない」子どもたちが、増えてきているという事実です。

――IEAの調査でも、「算数・数学の勉強は楽しい」「理科の勉強は楽しい」と答えた児童・生徒の割合は、平均を大きく下回っています。

井上 学習意欲の低下は、理数教科だけに限らず、全教科にわたって起きている問題です。「理数離れ」というよりは、もっと深刻な「知離れ」と考えてよいでしょう。やはりIEAの調査では、日本の子どもたちは他国と比べて、家庭学習の時間が非常に短いという結果が出ています。なかでも、理数教科は積み重ねが必要であり、学年が上がるにつれて抽象的な思考も求められます。子どもたちの学習意欲が低下すると、その影響が顕著に表れる教科だと言えますね。

注1■PISA(OECDの生徒の学習到達度調査)の概要
03年、41カ国・地域が参加した15歳児を対象とする学習到達度調査。読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーを主要3分野とする

注2■IEAのTIMSS(国際数学、理数教育動向調査)の概要
日本では、小学校4年生と中学校2年生を対象とし、算数、数学、理科の教育到達度を国際的な尺度によって測定する。03年は、46カ国・地域が参加


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