特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【課題整理】

コミュニケーション力を育てる3つのヒント

子どものコミュニケーション力を育てるために、学校ではどのような取り組みが考えられるのだろうか。東京大大学院・秋田喜代美教授と劇作家・平田オリザ氏の対談での提言や、現場の声を踏まえると、3つの課題が見えてきた。

図

Hint1
教師が変わる
「対話」のある授業づくり

 秋田教授と平田氏との対談でも指摘されていたように、コミュニケーション力は、他者との関係性があって、初めて培うことのできる力だ。子どもと教師、あるいは子ども同士が、きちんと「対話」できる時間や場を、授業の中で確保したい。
  その際に大切なのは、単に「グループで話し合わせた」「教師からの問いに対して考えさせる時間を設けた」といった「型」だけで終わらせず、子どもたちの話を教師がしっかりと聴き取り、授業の中でうまく生かしていけるよう、教師自身の意識を変えることだ。普段は目立たない子どものちょっとしたつぶやきをきっかけに、授業が深まった……といった経験は、だれにでもあるだろう。
  「協同的な学び」を軸に授業を進めることで、生徒同士が学び合う環境をつくっている、富士市立吉原東中学校の事例(P.7〜11)を参考にしてほしい。

Hint2
生徒が変わる
生徒の人間関係づくり

 地域社会や家庭環境の変化を受け、今の子どもたちは他者との多様なかかわりを十分に経験していない場合が多い。クラス間・学年間交流、あるいは地域の人々との交流など、他者とかかわる機会を意図的に設け、自分をよく知り、人とよりよい関係を築く力を育てていきたい。
  更に、対人関係の構築などを、教師が直接、支援することも求められるだろう。近年、注目を集めている構成的グループエンカウンター、教育カウンセリング、対人関係ゲームなどは、最も有効な手法の一つといえる。
  こうした手法は「専門的なスキルが求められる」といったイメージがあり、なかなか導入に踏み切りにくいかもしれない。豊橋市立本郷中学校の事例(P.12〜16)は、導入のきっかけになるのではないだろうか。

Hint3
授業が変わる
論理的な思考力・表現力の育成

 国際化・情報化が急速に進む今日、子どもたちが社会に出たときに必要とされるのは、初対面の人とでも互いの違いを前提とした上で、正確な意思の伝達・疎通ができる力だ。そうしたシーンを想定した言語の運用能力の育成も、これからの教育には求められるだろう。
  コミュニケーションを「技術」として捉えた指導はまだ一部の学校の取り組みにとどまっているが、私立麗澤中学・高校(P.17〜21)では、「言語技術科」という学校独自の教科を通じて、論理的思考力を養成している。コミュニケーション力を育む新たなカリキュラムとして参考にしてほしい。
Hint1
「対話」のある授業づくり
P.7 富士市立吉原東中学校
  key words
  ・聴き合う関係づくり
  ・教師の「待つ姿勢」
  ・コの字型の机配置
Hint2
生徒の人間関係づくり
P.12 豊橋市立本郷中学校
  key words
  ・構成的グループエンカウンター
  ・対人関係ゲーム
  ・教育カウンセリング
  ・学級集団づくり
Hint3
論理的な思考力・表現力の育成
P.17 私立麗澤(れいたく)中学・高校
  key words
  ・言語技術指導
  ・各教科の「ことばの力」
  ・言語環境の整備

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