特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
   PAGE 15/21 前ページ 次ページ

委員会活動や地域連携を通じ他者とのかかわりを学ぶ

 SGEがクラス単位でのコミュニケーション活動に比重を置く取り組みだとすれば、委員会活動は学校全体にコミュニケーションを広げるための手法といえるだろう。
  03年度まで本郷中学校には7つの委員会しかなく、一部の生徒が参加しているだけだった。また、委員会の活動は部活動の時間と重なっており、部活動と委員会を掛け持ちしている生徒にとっては中途半端な活動になっていた。
  そこで、04年度からは従来の約2倍に当たる15の委員会を設置し、すべての生徒がいずれかの委員会に所属することとした。真剣に活動に取り組めるよう、月1回開かれる各委員会の定例会は授業時間中に行う。「すべての生徒が委員会に参加することで、帰属意識は一層高まった」と柴田先生は説明する。
  新設する委員会は生徒からアンケートを取り、集まった案の中から生徒会と教師が厳選して決定した。中でもユニークなのが、各クラス長がメンバーとなる「ピア・サポート委員会」だ。この委員会の使命は、生徒が抱える問題に対して、委員の生徒が相談相手になって支えること。委員は聞き方・話し方などカウンセリングの訓練を受け、ときにはSGEで教師のサポート役を務める。担任にとっても強力なアシスタントになるというわけだ。
  ほかにも、学校緑化を推進する「ガーデニング委員会」、授業中の態度をチェックする「学習委員会」、健康観察や保健調査などを行う「保健委員会」などが独自の活動を展開し、学校の活性化に貢献した。
  「保健委員会が熱中症予防のキャンペーンを行ったとき、単に『熱中症に注意しましょう』と呼びかけたり、ポスターを作ったりするだけでは面白くないと、歌や踊りを交えるといった独自の工夫を凝らしていました。生徒が意見を出し合いながら、委員会をもり立てていこうという意欲が高まっている証拠だと思います」(生徒会顧問・白井康浩先生)
  本郷中学校では、コミュニケーションの対象を地域にも広げている。7月の校区クリーン作戦と1月の自主防災活動は最大の目玉だ。校区クリーン作戦では、自宅のある地域ごとにグループを組み、地域の総代やPTAの人たちと共に、寺社や公園、病院などを掃除する。掃除が終わったあとは懇親会を開き、地域の高齢者から昔話を聞いたり、一緒にゲームを行ったりして親睦を深める。一方、自主防災活動は消防署の職員を招いて行う避難訓練で、避難の様子を講評してもらったり、地震に備えた心構えを聞いたりしている。
  保護者との交流も重視している。従来は宿題や課題のチェックを行っていた夏休みの出校日を04年度からは「ふれあい出校日」に改めたのもその一環だ。保護者を交えてのバーベキュー大会やボーリング大会など、クラスの裁量により、それぞれ工夫を凝らしたレクリエーションを実施している。今では、生徒の間にも地域の人々に気軽に挨拶する意識が芽生え、一体感が生まれつつあるという。

   PAGE 15/21 前ページ 次ページ
目次へもどる
中学校向けトップへ