特集 「学びに向かう」生徒をどう育てるか?
山形県
鶴岡市立鶴岡第二中学校

1947年、山形県立鶴岡第一高校(現・鶴岡南高校)に併設する形で開校。教育目標は「自ら学び、心豊かで、たくましい生徒」。各学年ともに総授業時数は年間1000時間を超え、きめ細かい指導の実践による学力の向上を図っている。

 

五十嵐昇

▲校長 五十嵐昇先生

生徒数 475人
学級数 14学級
TEL 0235-22-8322
FAX 0235-22-8776

所在地

〒997-0011
山形県鶴岡市宝田2-8-34
http://www.city.
tsuruoka.lg.jp/ 070252/


VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【事例1】

「チャレンジャーノート」「朝学習」で
自ら課題を見つけ学ぶ姿勢を育む

山形県 鶴岡市立鶴岡第二中学校

毎日ノート2ページ以上を自主学習する「チャレンジャーノート」と20分間の「朝学習」。いずれの取り組みも、何を学習するかを決めるのは生徒自身。与えられるのではなく、「自ら学ぶ」姿勢を地道に育てている鶴岡第二中学校の取り組みを紹介する。

自主学習へ生徒を導く「チャレンジャーノート」

 宿題の有無にかかわらず、自分なりの課題を見つけて毎日必ず机に向かう―。家庭学習を徹底的に習慣づけるため、鶴岡第二中学校では、10年以上に渡って「チャレンジャーノート」に全校で取り組んでいる。これは、1人1冊の大学ノートを用意し、宿題以外に毎日2ページ以上を自主的に学習するというもの。「量のノルマ」だけを課し、どの教科のどのような内容を学習するのかは生徒自身に任せることで、自発的な学習姿勢を育てることを狙いとしている。
  生徒たちは、英単語の練習や教科書の英文の筆写、数学の問題演習などのほか、テスト前後にはその対策や見直しに取り組むことが多い。毎朝提出されたチャレンジャーノートはクラス担任がチェックし、「終わりの会」で返却する。
  新入生にとっては、「与えられるものをこなす」ことを中心にした小学校での学習と、「課題を自分で見つける」という中学校での学習のギャップは大きい。そこで、スムーズにチャレンジャーノートに取り組めるようにと、中1の1学期までは分量を1日1ページとしている。入学式直後の全校オリエンテーションや各教科の最初の授業で、チャレンジャーノートを含め中学校での学習の仕方や心構えなどを伝えている(図1)。
  「入学時点での家庭学習習慣は、生徒によって個人差があります。理解の速い生徒はある程度、自分で学習を進められる力がありますが、理解の遅れがちな生徒は、チャレンジャーノートを提出するだけで精一杯。中には、提出できない生徒もいます」(教務主任・碓氷勉先生)
  それでも、「1人でも提出できる生徒を増やしたい」(碓氷先生)と、未提出の生徒や内容が不十分な生徒に対しては、放課後、きちんと仕上げるまで個別指導で対応する。不十分な内容とは、単語の書き取りを1行おきにするといった、空白が多いものだ。クラス担任が部活動の顧問らと連携をしながら、粘り強く支援を続けることで、「1、2か月もすれば、ほとんどの生徒がきちんと提出できるようになります」と、学習指導部長の田澤明広先生は話す。
  「英語や国語、数学は宿題も出しますが、毎日ではありません。宿題がなくても、土曜・日曜も含めて、毎日机に向かって学習する習慣をつけさせるという面では、大きな効果を上げていると思います」(田澤先生)

▼図1 オリエンテーションのプリント(数学) クリックすると拡大します
図1
1学期の最初の授業で行われるオリエンテーションでは、各教科の学習方法や心構えなどを示したプリントを配る
  充実したノートは、教室で掲示したり学級便りに掲載したりして、「良い手本」として紹介する(図2)。紹介の手法はクラス担任に任されており、田澤先生は、2か月に1回ほどのペースで掲示を替えている。
  「単語などを覚えるパターン、授業のまとめと演習のパターンなど、異なる内容で3人分を掲示しています。なるべく大勢の生徒のノートを紹介するため、同じ生徒を何度も選ばないようにしています」
  「量」にはノルマがあるが、「内容」は生徒に任されているため、ページを埋めただけというノートもあるという。
  「英単語の書き取りでも、本気で覚えようとする生徒がいる一方で、1行に4単語くらいしか書かず、とりあえずページを埋めたような生徒もいます。取り組みが不十分なノートについては、しっかり取り組むようコメントを書いて返却しています」(田澤先生)
  チャレンジャーノートは成績評価の対象にはならないが、全校で続けてきた結果、「取り組むのが当たり前」という意識が生徒たちの間に浸透している。個人差はあるものの、自分で課題を見つけて学習する習慣の定着度は高い。
  ただし、学力の高い生徒が必ずしも内容の濃いノートを提出するとは限らないと、田澤先生は話す。
  「数学の得意な生徒が途中の式を飛ばして解答するのと同じように、学力の高い生徒が内容の薄いノートを提出することもあります。また、丁寧にまとめることばかりに力を入れている生徒もいますが、それでは知識が定着しません。問題演習にも取り組むようにアドバイスしています」

▼図2 教室に掲示された「チャレンジャーノート」
図2−1
図2−2
内容が充実したチャレンジャーノートは、掲示や学級便りを通してお手本として紹介する。「ただ紹介するのではなく、どこが良いのかポイントを示すようにしています」(田澤先生)

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