特集 カリキュラムから考える小中連携

東京都  品川区立小中一貫校 日野学園

東京都 品川区立小中一貫校 日野学園

全国初の施設一体型の公立小中一貫校として2006年4月に開校。ただし、現行の学校教育法には小中一貫校の規定がないため、法律上は第二日野小学校と日野中学校を同じ敷地に併設しているという形態をとる。

校長●菅谷正美先生

児童・生徒数●557名(9学年)

学級数●20学級(9学年)

所在地●〒141-0022 東京都品川区東五反田2-11-1

TEL●03-3441-3209

FAX●03-3441-3246

URL●http://www1.cts.
ne.jp/~hinogaku/

公開研究等の予定●2007年11月9日(金)に実施予定


菅谷正美

▲品川区立小中一貫校日野学園校長

菅谷正美
Sugaya Masami
*本文中のプロフィールはすべて取材時(07年3月)のものです
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【事例1】

義務教育9年間を見通したカリキュラムで壁を取り払う

東京都 品川区立小中一貫校 日野学園

東京都品川区では区立の全小中学校で小中一貫教育を行っている。中でも1年生(小1生)から9年生(中3生)までが同じ校舎で学んでいるのが日野学園だ。カリキュラムの工夫や小中一貫教育導入後の子どもや教師の変化について、菅谷正美校長にうかがった。

同じ校舎の中、子どもを見る視点が近づく

  東京都品川区が構造改革特区の小中一貫教育特区の申請をしたのは、2003年7月のことだ。それから2年余りの研究準備期間を経て、06年度から区内の全小・中学校において小中一貫教育を始めた。
  中でも、大崎地区にある第二日野小学校と日野中学校は、1年生(小1生)から9年生(中3生)までの子どもが、同じ校舎で一緒に学ぶ「品川区立小中一貫校 日野学園」として新たなスタートを切った。小中一貫教育の動きは全国各地で進んでいるが、小学校と中学校が同じ校舎を共有するケースは、全国でも日野学園が初めてとなる。さらに品川区は、07年4月に2番目の小中一貫校として大井地区に伊藤学園(原小学校、伊藤中学校)を開校した。
  日野学園の菅谷正美校長は、「小学校と中学校が、カリキュラムも場所も一つに集約されたことで、小中の壁が確実に取り払われようとしている」と言う。
  「日野学園の正式名称はこれまでと変わらず第二日野小学校と日野中学校ですが、開校から1年が過ぎ、子どもたちの間には『小学生』『中学生』という意識はなくなってきています。教職員も、会議などで『小学校では』『中学校では』という発言をしないように心がけ、『1年生から9年生』という呼称を使っています。校種を分けて考えるのではなく、9年間の義務教育全体で子どもの学びと育ちを捉える姿勢へと変化しつつあるのです」
  品川区は、小中一貫教育を導入した狙いを、「同じ義務教育でありながら小・中学校間に存在する学力観や指導観、広い意味での教育観などの違いを是正し、子どもたちから学習上の負担を取り除くと共に、人間形成上の連続性をもたせること」にあるとしている(『品川区小中一貫教育要領』品川区教育委員会編著/講談社)。これまでの小学校と中学校の教育内容や教育方法には大きな段差があり、子どもの学びや人間形成の連続性を阻害する要因となっていたのではないか・・。こうした反省に立って、小中一貫教育が構想されたのだ。
  以上のような背景から、品川区の小中一貫教育事業では、9年間を見通した独自カリキュラムの作成に最も力を入れてきた(図1)。
  「カリキュラムや教材の開発は、小学校と中学校の教師が一緒に行いました。区独自の教科の『市民科』や1年生から行う英語科、各教科の発展的な学習を扱う『ステップアップ学習』の内容も、カリキュラムを作成する過程で、小中関係なく、教師全員で練り上げていきました」
  このカリキュラムは現在、区内の全小・中学校に導入されている。
  「本校では、小学校と中学校の教師が同じ敷地内で共に働き、子どもと接していますから、自然と子どもを見る目線が近づき、問題が起きてもすぐ話し合うことができます。むしろ小学生と中学生が別々の校舎で学ぶ従来の学校同士の連携でこそ、それぞれの教師が協力してカリキュラムをつくり、実践していくことが重要になると思います」
図1
品川区では、道徳、特別活動、「総合的な学習の時間」を再編成し、「市民科」「1年生からの英語科」「ステップアップ学習」を新設した

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